第八章
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「お金のことしっかりしとらんな」
「しゃあないやろ、弟がせがむんやからな」
「新喜劇連れて行けってか」
「そや、そやからか」
自腹を切って、というのだ。
「連れて行くんや。けどお昼も食べさせなあかんやろ」
「お弁当作ったらええやろ」
「三人分かいな」
「そうしたらええやろ」
「それもそやな、ほな日曜楽しみにしとくんやな」
何気にヌッチのことも入れて話すが彼は気付いていない。
「愛妻弁当や」
「何時結婚してん」
「気持ちがそうやねん」
それでだというのだ。
「そやから楽しみにしとくんやな」
「量は沢山な」
「ほなドカ弁でええな」
「ボリュームどっさりとな」
こうした話をしながら日曜の約束もする二人だった、そうした日々を送るヌッチだった。イタリアに産まれた彼だが最早足のつま先から頭の天辺まで大阪人だった。それでその日曜もだ、家に出る時に両親に言うのだった。
「ほな吉本観て来るわ」
「面白いネタ仕込んでくるんやで」
「昔の漫才も勉強してきいや」
両親もこう彼に言う。
「吉本行くんやったらな」
「そうしてくるんや」
「わかってるわ、デートのついでに行って来るわ」
こう言って笑顔で家を出て岸里の商店街を歩いて駅に行く、そうしてそこから円と待ち合わせをする。そこで駅前でだった。
六甲おろしを口ずらむおっさんにだ、笑ってこう言った。
「今日も阪神勝つとええな」
「ほんまやな」
そうしたことも言って待つのだった。それが彼だった。
関西弁のイタリアン 完
2014・5・20
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