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関西弁のイタリアン
第二章

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「それで難波グランド花月で吉本観ようか」
「おいおい、吉本かいな」
「それかいな」
「そや、彼女は」
「あんた彼女おらんやろ」
「おるわ、心の中に」 
 すぐにだ、ヌッチはクラスメイトのツッコミにこう返した。
「ちゃんとな」
「それ誰や」
「吉本ばななさんや」
「吉本でもおばさんやろが」
「ほな田辺聖子さんや」
「お聖さんは今は神戸にいてはるわ」
 こうした見事なツッコミと返しもする、とにかくだった。
 彼は生粋の関西人だった、そうして。
 大阪の生活を楽しんでいた、その中で。
 実際に吉本新喜劇も楽しんでいた、最早何処までも大阪人だった。
 それ故にだ、学校の昼食でもだ。
 焼きそばを食べてだ、それと共に。
 御飯も食べる、そうして一緒に食べているクラスメイト達ににこにことして言った。
「焼きそば定食最高や」
「そこでスパゲティちゃんか」
「そういかへんのか」
「そや、スパゲティやなくてな」
 まさにだというのだ。
「これや」
「焼きそばかいな」
「それかいな」
「それかお好み焼きかモダン焼きか」
 若しくはだった。
「うどんや」
「うどん定食かいな」
「それやねんな」
「あれええわ」
 そのうどん定食についてもだ、ヌッチはこのうえない美味を思い出しながらそのうえでクラスメイト達に語るのだった。
「特にけつねがなあ」
「きつねがやな」
「それが」
「そや、それでおやつはいか焼きや」
 これもいいというのだ。
「ところ天やったらな」
「あれやろ、蜜やろ」
「黒蜜やろ」
「それしかないやろ」
 生粋の関西人の言葉だった。
「酢はないわ」
「そやな、ところ天はやっぱり黒蜜やで」
「それしかないわ」
「何で酢やねん」
 また言うヌッチだった。
「それはあかんやろ」
「やっぱりところ天には蜜やで」
「黒蜜やで」
「そや、それしかないわ」
 こう言うのだった。
「ついでに言えばお醤油はうす口や」
「お醤油もな」
「それやな」
「大阪や」
 そうした料理全体についてだ、ヌッチは言い切った。
「それしかないわ」
「ほなヌッチこれからもか」
「大阪におるんやな」
「それでここで生きてくか」
「そうすんねんな」
「当たり前やろ、おとんもおかんもここで働いてるしな」
 この大阪で、というのだ。
「そやったらわいもや」
「これからも大阪か」
「大阪で生きてくんやな」
「将来の夢はづぼら屋の店員さんや」
 河豚料理店の店で働きたいというのだ。
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