第一章
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関西弁のイタリアン
ニコラ=ヌッチはイタリアのボローニャ生まれだ。しかし今彼は大阪の東成区、近鉄岸里駅のすぐ近くに住んでいる。
そこから高校に通っている、そうしていつも同級生達にこう言うのだった。
「何で阪神弱いねん」
「打線があかんからや」
「点を取れんからや」
同級生達は口々に彼に答える。
「ついでに言えばガンバ大阪もか」
「あまり強ないわ」
「何で大阪はそうやねん」
顔だけはイタリア人だ、黒髪は縮れていて細い。それを後ろで束ねてオールバックみたいな感じにしている。
目は黒く彫がある、鼻は高く顔は引き締まっていてかつ陽気だ。そして睫毛は長い。
背は高く一八〇を超えている、こちらは平均的なイタリア人より高い。逞しい身体はまさにルネサンス時代の芸術でありブレザーの制服も似合っている。
しかしだ、彼はいつもこう言っていた。
「ほんまなあ、阪神が弱いとわいあかんわ」
「朝起きて新聞見て調子落とすやろ」
「へこむやろ」
「ほんまへこむわ」
実際にだ、腕を組んで困った顔で言う。
「阪神しっかりせえや」
「まあな、阪神はなあ」
「負けることが華やからな」
「毎年春先はええんや」
「けれど夏になったら落ちるんや」
「高校野球はじまってな」
「そや、高校野球や」
ヌッチはここで高校野球の話もするのだった。
「今年大阪何処が出るねん」
「大阪桐蔭やろ」
「やっぱりあそこやろ」
「いや、近代付属ちゃうか?」
「PL復活もあるで」
「それ言うたら大体大付属やろ」
この高校の名前も出る。
「浪商も復活するで」
「上宮もいけるで」
「何か今年も熱くなりそうやな」
ヌッチはクラスメイト達の話を聞いて腕を組んだまま述べた。
「高校野球も」
「そやな、何かとな」
「花園も目が離せへんけどな」
「今年の高校野球もええで」
「面白いものになるで」
イタリア人だが野球好きである、大阪に家族の仕事の関係で四歳の時から今に至るまで住んでいる。それで最早生粋のイタリア人になっている。
それでだ、クラスメイト達にこんなことも話した。
「そんでや、わい今日部活の後でや」
「ああ、あんた空手部やったな」
「それやったな」
「そや、その空手部の部活の後でや」
何をするかというのだ。
「ちょっと駅前で遊ぼうか」
「鶴橋のかいな」
「それとも上本町のかいな」
「鶴橋にしよか」
そこでだというのだ。
「そこでちょっとゲーセン行ってホルモンでも食おうか」
「たこ焼きの方がええやろ」
「お好み焼きはどや?」
クラスメイト達は彼にこうした料理を提案した。
「焼きそばもええで」
「あそこ何でもあるさかいな」
「そやな、そやったらな」
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