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寒いからこそ
第七章

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「暖かくなってるわね」
「どんどんね」
「どうしてなのかな」
 サキルはこのことを不思議に思って言った。
「こんな風になるなんて」
「どうしてかしらね」
 ナキヤもこのことはわからなかった、それで声で首を傾げさせたのだ。
「このことは」
「そうだね、どうしてかな」
「このこと課長さんに聞いてみようかしら」
「それがいいね、明日にね」
 仕事のその日にとだ、二人は外の吹雪を見ながら話した。外の極寒は二人には全く関係がない程まで暖かかった。
 それでその次の日役所でマキイネンに尋ねるとだ、彼女は二人に笑顔でこう言った。
「それは愛よ」
「ええと、この場合は」
「何故そこで愛、ですか?」
「日本ではこう返すみたいね」
 ここでも日本を話に出す彼女だった。
「そう、けれどね」
「愛ですか」
「愛故にですか」
「そうよ」
 まさにその通りだというのだ。
「愛があるからよ」
「暖かいんですか」
「私達の家は」
 極寒の新居でも、というのだ。二人も。
「愛があるから」
「だからこそ」
「そうよ、実際に一人でいるよりもね」
 この現実からも話すマキイネンだった。
「二人でいた方が体温でね」
「暖かくなる」
「そういうことですか」
「そう、しかも今の貴方達はお互いを想っているから」
 その心もあって、というのだ。
「その気持ちもあってね」
「暖かいんですね」
「冬の新居なのに」
「そういうことよ、私達もそうだったから」
 マキイネンは優しい笑顔にもなって話した。
「結婚して冬に新居に入ったけれど」
「寒くなかったんですね」
「私達みたいに」
「夏みたいだったわ」
 その優しい笑顔での言葉である。
「本当にね」
「じゃあ僕達も」
「冬でもですね」
「暖かいでしょ、だからね」
 それでというのだ。
「私も勧めたのよ、貴方達にね」
「そうですか、寒さは跳ね返せるんですね」
「愛があれば」
「そうよ、愛は吹雪よりも強しよ」
「幾らイバロの冬が寒くとも」
「それでもですね」
「そう、そのことを覚えておくのよ」
 こう二人に話すイバロだった、そしてだった。
 二人もマキイネンに笑顔で頷いてだ、二人で仕事をして終わってからその家で暖まるのだった。お互いの愛情で。


寒いからこそ   完


                             2014・4・21
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