第五章
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「熱いわよね」
「どういう訳かね」
「どうしてかしら」
ナキヤは首を傾げさせて言った。
「普段より暑く感じるのは」
「暖房は」
サキルは部屋の暖房の温度を確かめた、それは普段とあまり変わらない温度だった。三重の窓は全て閉められているにしても。
「いつもと変わらないよ」
「そうよね」
「それでもね」
「このお料理だってね」
シチューに肉料理だ、これもだ。
「普段と変わらないけれど」
「熱くてもね」
「ええ、普通のお料理よ」
「それでもね」
「何か違うわよね」
「暑いね」
「普段よりね」
そうだというのだ。
「そんな感じよね」
「どういうことかしら」
「まあとにかくね」
「ええ、これ食べてね」
主食のパンも食べつつ応えるナキヤだった。
「それからよね」
「お風呂に入ってね」
「それからベッドでね」
「一緒に寝よう」
「そうね、お引越しのことで今日は疲れたし」
「ゆっくりとね」
「休みましょう」
こう話してだった。
二人は食べ終わって後片付けをしてから風呂に入ってベッドに一緒に入った。そうして一緒にベッドの中にいてもだった。
「違うね」
「そうよね」
サキルとナキヤはそのベッドの中で二人で話した。
「一人でベッドの中にいるよりも」
「結婚する前からこうして一緒にいることはあったけれど」
勿論ベッドの中に、である。
「それでも結婚してからは」
「今はね」
「また違うわね」
「これまでよりもね」
「ええ、全然違うわ」
「暖かいね」
サキルは自分の隣に寝ているナキヤに顔を向けて話す、それはナキヤもだ。彼の顔を見てそのうえで話をしているのだ。
「これまでよりもずっと」
「何かね」
ここでこうも言ったナキヤだった。
「暖房を効かせるよりも」
「ずっとね」
「うん、暖かいね」
「そうよね、一人暮らしの時は」
その時のこともだ、ナキヤは話した。
「こんな暖かくはなかったわ」
「いつもそう言ってたよね、ナキヤは」
「ええ、けれど」
それでもというのだ。
「今はね」
「暖かいね」
「何かこのままだと」
どうかともだ、ナキヤはサキルの顔を見て話した。
「暖かくなりそうね」
「そうだね、すぐにね」
「私達二人がいれば」
「そうなりそうだね」
二人で笑顔で話す、そして寒い筈のフィンランドの朝もだ。
サキルは起きるとだ、驚く顔で言った。
「あんなに寒い筈なのね」
「そうね」
ナキヤも起きた、彼と同じベッドから。これまでは暖房を効かせたままでも驚く程寒いイバロの厳しい冬でもだ。
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