第一章
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寒いからこそ
フィンランドは寒い、特に北極圏にあるイバロはだ。そのフィンランドの中でもとりわけ寒いことは言うまでもない。
だがそのイバロにも人はいる、白夜の中で生活を営んでいる。
イバロの市役所に勤めているサキル=イリヤコンは今同じ市役所で勤務しているナキヤ=コルシンキと交際している。サキルもそろそろ三十近いので同じ歳のナキヤによくこう言っていた。
「僕達もそろそろね」
「結婚ね」
「うん、そうしないかい?」
こうナキヤに言うのだ、既にプロポーズはしていて後は正式に結婚するだけだ。
「家を買ってね」
「そうね、けれどね」
「けれどなんだ」
「そこにいてもね」
「何かあるのかな」
「ええ、今のお家はいいけれど」
ナキヤは金髪碧眼のその顔を暗くさせた、細長く彫もあるまさに北欧系の顔だ。サキルも彼女と同じく金髪碧眼だが顔はやや正方形に近い。
「新居はね」
「寒いかもっていうんだね」
「そう、新しいお家はどうしてもね」
寒いというのだ。
「人がこれまでいなかった分」
「暖房ですぐに暖かくなるんじゃないかな」
「違うわよ、それが」
「あれっ、そうなんだ」
「新しいお家はそこが違うのよ」
「長い間誰も住んでいなかったお家もだね」
「私今アパートに住んでるけれど」
勤務先である市役所に近いそこにだ、通勤の便を考えてのことだ。
「最初寒かったから、実家に比べて」
「暖房があっても」
「そう、、あってもね」
それでもだったというのだ。
「そこが違うから」
「だからなんだ」
「只でさえここは寒いから」
イバロはというのだ、このフィンランドの中でも。
「そこが気になるのよ」
「寒さだね」
「結婚してやっぱり新しいお家に住むのよね」
「もういい家見つけてあるよ」
そしてその家にというのだ。
「二人で住もうって思ってるけれど」
「その新居がよ」
「寒いっていうんだね」
「それが問題だけれど」
「じゃあどっちかの親と同居するとか」
元から人がいる家にだ、サキルはこうナキヤに提案した。
「それはどうかな」
「元から人がいて暖かいから」
「これならどうかな」
「ううん、けれど私の実家もあなたの実家も」
そう聞いてもだ、難しい顔で答えたナキヤだった。
「お父さん達と同居したら」
「自由には出来ないか」
「自由でいたいわよね」
「やっぱりね」
その通りだとだ、サキルはナキヤのその言葉に答えた。
「結婚したらね」
「そうよね、だからね」
「親との同居は」
「私はあまりね」
「僕も。言われてみたらね」
サキルは考えつつナキヤに答えた。
「二人で楽しく過ごしたいね」
「だから結婚したら」
「やっぱり二人でだね」
「暮
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