第三章
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「楽しみにしておけよ」
「ライム入りのラム酒とか乾いたパンだけじゃないんだな」
「ああ、肉だって干し肉じゃなくてな」
「ちゃんとした肉だな」
「しかもイギリスのよりも美味いからな」
クリッグトンは笑顔のまま同僚に話した。
「楽しみにしておけよ」
「そうさせてもらうな」
水兵達は地中海のまさにど真ん中を進みながら港に着いた時のことを楽しく話しつつ仕事をしていた。とりあえずこの時までは。
だがウィンザーがだ、大砲からふと目を海にやってだ、その目を鋭くさせてクリッグトン達にこんなことを言いだした。
「おい」
「おい?」
「おいってどうしたんだ?」
「海に何かいないか?」
その海を見つつ言うのだった。
「あそこにな」
「?あそこか」
「あそこかよ」
クリッグトン達はウィンザーが指差したそこに目をやった、すると。
そこには確かに何かがいた、青い大海原の中に黒いものが見える。それは次第にだった。
船の方に来た、クリッグトンはその黒いものを見て言った。
「大きいな」
「ああ、かなりな」
ウィンザーもその黒いものを見て言う。
「大きいな」
「流木か?」
クリッグトンはまずはそれではないかと考えた。
「それか?」
「いや、流木にしてはな」
それにしてはとだ、ウィンザーがクリッグトンに答えた。
「動きがな」
「そういえばな」
動きが動物的だ、クリッグトンも言われて気付いた。
「違うな」
「そうだよな、それでな」
ウィンザーはその黒いものの動きを見つつさらに言った。
「あの動きはな」
「魚、いや違うな」
上下に動いている、だからクリッグトンもすぐに否定した。
「あれは」
「そうだよな」
「おい、まさかな」
同僚の一人がここで言ってきた。
「あれが海馬じゃないのか」
「海馬か、あれが」
「そうなのか」
「ああ、そうじゃないのか?」
こう言うのだった。
「あれこそがな」
「そうかもな、あれがな」
クリッグトンがその同僚の言葉に応えた。
「海馬かもな」
「シー=サーペントはあれだろ」
その同僚はシー=サーペントの話もした。
「蛇だろ」
「ああ、でかい海蛇だな」
「サーペントだからな」
海のだ。
「鯨じゃないからな」
「じゃああれは海馬か」
「それになるか」
馬は哺乳類だ、だから彼等も察したのだ。
「あれは海馬か」
「そうなんだな」
「おい、こっちに来るぞ」
ウィンザーが言った。
「その海馬が」
「あっ、確かにな」
「こっちに来るぞ」
「船に襲い掛かるつもりか?」
「まさかと思うが」
「艦長に来てもらうか」
ここでだ、クリッグトンは眉を顰めさせて言った。
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