第四章
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第四章
やがて八時になるとあのウェイトレスが来た。そのうえで彼女に話してきたのだった。
「あの、お客様」
「んっ!?」
「申し訳ありませんが閉店時間です」
「あっ、そうなのか」
「はい、八時閉店ですので」
こう話すのである。
「ですから」
「ああ、それじゃあ」
「まことに申し訳ありません」
女の子そのものと言ってもいい可愛らしい声で謝罪してきたのだった。その声を聞いていると美優もどうにも落ち着くのであった。待っていて少しいらいらしていたがそれでもその声を聞くと心が落ち着いたのである。
「それで」
「じゃあな」
こうして美優は店を出た。今度は店の外に立って待つ。待っていると雨が降ってきた。それでも美優は待つことにした。店の入り口の覆いのある場所の下に立ちそのうえで雨を凌いだのである。
「別に傘出す必要もないな」
鞄の中に折り畳みの傘があるがそれでも今はその下に待つのだった。
八時を回り八時半になった。もう本も読まずイアホンを使ってその椎名林檎のCDを聴きながら待っていた。もうメールも届かなかった。
それでも待ち遂には九時になった。もう帰ろうかとも思ったがそれでも待った。そしてその九時も回ったその時にやっとなのだった。
「御免」
その声と共にだった。背広を着て傘を差した青年が彼女のところにやって来たのだ。
黒い髪を耳が完全に隠れるまでえ伸ばし眉は細くそれぞれ斜め上に勢いよく伸びている。細い目は一見するときついがその光は優しい。顔は細く引き締まっている。背は高くスポーツをしているのか均整が取れている。その彼が美優のところに来たのである。
そして傘を差したまま深々と頭を下げて。謝るのだった。
「言い訳になるけれどバスが渋滞に巻き込まれて」
「それでも出るのが遅くなかったか?」
美優はこうその彼に問うのだった。
「残業したの?」
「そうなんだ。それは言わなかったかな」
「メールにもなかった」
少しぶしつけに言葉を返すのだった。
「全然な」
「御免、じゃあ書き忘れた」
それを聞いて残念な顔になった彼だった。
「それも御免」
「頼むよ鉄ちゃん」
美優はここで彼の仇名を話した。その彼秋元鉄二は美優の言葉にさらに申し訳ない顔になるのだった。
そうしてその彼に対して。美優はまた言った。
「それじゃあ」
「どうしたの?」
「ここまで遅れたからサービスしてもらうな」
こう彼に話すのである。
「サービスな。いいかな」
「サービス?」
「そうだよ。待ったんだし」
「御免。それじゃあ」
「何処かいい場所に連れて行って欲しいな」
言いながらそっと店を出ようとする。そうしてそこで自分の傘を出そうとするがそこで鉄二はその彼女の頭の上に今自分が差している傘を差し出し
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