第三章
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第三章
「んっ!?この本って確か」
そこは海外文学のコーナーだった。それもイギリス文学である。チェスの世界にいるような気持ちになっていた彼女の目に入ったのはルイス=キャロルの本だった。
「アリスか」
不思議の国のアリスである。その本が目に入ったのだ。それと共にチェスのことを思い浮かべると自然に手が出たのであった。
そのアリスを手に取ってカウンターに向かう。カウンターには文庫本だけでなくCDも買った。CDは椎名林檎の曲を買った。彼女の好きなアーティストなのだ。
本が消費税を抜いて一〇〇円、CDが五〇〇円だった。確かにこれからのデートの為に金は置いておかなくてはならない。しかしこの程度なら出しても問題はなかった。
それで実際に金を出して買った。その足で向かったのは喫茶店だった。喫茶店の名前はマジックといった。そのイギリスを思わせる洒落た内装の店の窓際の席に座り。そうしてそのうえでエプロンを着けた小柄なウェイトレスの女の子の応対を受けるのだった。
「御注文は何ですか?」
小柄で垂れ目の女の子だった。声も顔立ちも実に可愛らしい。黒のショートは若葉と同じだったが受ける印象は全く違っていた。
そのウェイトレスの女の子が来るとだった。美優は少しだけ笑って彼女に告げた。
「コーヒーいいかな」
「コーヒーですね」
「ああ。ウィンナーを頼む」
こう女の子に告げたのだった。
「それな」
「わかりました」
女の子はすぐに注文を書いてそのうえでその場から去る。暫くしてそのコーヒーが来た。白いソフトを思わせる形のクリームが上に乗せられたコーヒーだ。まずはその白いクリームをスプーンですくって食べそれからクリームのせいで黒から薄いブラウンになったコーヒーを飲む。
コーヒーには砂糖を入れずクリームとコーヒーそのものの味を楽しむ。いいものだとすぐにわかる美味い豆だった。ほのかな甘みと適度な苦味だった。そのコーヒーを飲みながらその不思議の国のアリスを読んで時間を潰す。何十ページか読んだところで時計を見た。
もう六時だった。その時間を見て美優は携帯でメールを送った。今彼女が何処にいるのか鉄二に対して連絡したのである。
「そろそろだな」
メールを送ってから呟いた。携帯はすぐに鞄の中に戻した。
待ちながらさらにコーヒーを飲む。それからまた本を読む。そうしてさらに時間を潰していたがまだ彼は来なかったのだった。
ここで美優は思った。遅いと。それで少しいらいらしだした。
「遅いな」
それは顔に出さずに呟いただけだった。しかしすぐに気持ちを落ち着けてそのうえでまたコーヒーを飲む。コーヒーを飲んでそのうえでまた時間を潰す。
そのうち七時になった。それでも鉄二は来ない。そのうちに携帯が鳴った。
出るとメールだった。鉄二
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