第一章
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ケット=シー
リバプールから少し離れた町に住んでいるポール=マックアーサーはこの時悩んでいた。悩み過ぎてパンも喉を通らない。
その彼にだ、友人の一人が彼に高校の授業の休み時間に問うてきた。
「何だよ、ひょっとして恋わずらいか?」
「だったらどうだってんだよ」
鳶色の目を向けてだ、ポールはその友人に返した。顔立ちは悪くなく背は高い。スタイルはすらりとしている。綺麗な黒髪をショートにしているがロッカーを思わせるスタイルだ。
「それで」
「やっぱりそうか」
友人は彼の言葉を聞いて頷いた。
「そうじゃないかって思ったけれどな」
「それで後はわかるだろ」
ポールは自分から友人に言った。
「好きで仕方ないけれどな」
「相手に言えないんだな」
「それで悩んでだよ」
何も喉を通らなくなっているというのだ。
「どうしたものだよ」
「よくある話だな」
「本当にな、どうしたものだよ」
高校でこう話してだった、そして。
家でもだった、苦い顔で自分の部屋で言った。部屋には家で飼っている黒猫のチャーリーがいる。だがそのチャーリーに構わず言うのだった。
「全く、言う勇気があればな」
「そうですよね、いいですよね」
何処からか声がした。
「困らないですよね」
「そうだよな。それで今部屋にいるのは俺一人だけれどな」
ここでこう言ったポールだった。
「今誰が喋ったんだ」
「はい、僕です」
ここでまた声がしてきた。
「僕が喋りました」
「僕?誰だ」
「はい、僕です」
ここでだ、チャーリーがだった。
右の前足を挙げてだ、ポールに言ってきた。
「僕が喋りました」
「御前猫だろ」
「猫は猫ですけれどね」
後ろの二本足で立って歩いてきながらだ、チャーリーはポールのところに来てそのうえで言ってきたのだった。
「僕はちょっと違いまして」
「喋られる猫はちょっと違うのか?」
「実は妖精なんです、僕」
「今知ったぞ、そのこと」
ポールは部屋で自分の勉強机に座っていたがそこにとことこと歩いてきたチャーリーに対してこう返した。
「御前妖精だったのか」
「猫の妖精です」
「ケット=シーか」
猫の妖精といえばそれだ、二本足で歩き人間の言葉を喋る。ポールもこのことは童話等で知っている。
「御前それだったのか」
「はい、そうなんですよ」
あっけらかんとして答えるチャーリーだった。
「実は」
「そうだったのか」
「はい、それでご主人」
今度はチャーりーから言ってきた。
「今悩んでおられますね」
「話は聞いてるんだな」
「そうです、それで」
チャーリーの方からポールに問う。
「恋をしておられますね」
「ああ、それで困ってるんだよ」
「
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