第01話 任務:艦隊名を受け入れよ!
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雷」
壁にめりこんだまま、提督は雷に話しかける。
「もしかして……もしかすると……もしかしちゃってるのかな……」
「ああ、もしかしちゃってるな、こりゃあ」
「やっぱり……発動したのかな……」
「ああ、発動しちゃったな、リアルかくれんぼ」
めりめりめり……どばたぁんッ!
提督は壁から抜け落ち、床に倒れこんでしまう。
「雷は知ーらないっとぉ」
雷は他人事のように、しれっと司令官室を出て行ってしまう。
「またか……またなのか……うおおおおおおぉぉぉおおおぉぉぉッ!」
提督は床に顔を擦りつけながら、悲しすぎる咆哮を上げた。
――――――
――――
――
とっぷりと丑三つ時。
提督はひとりぼろぼろになって、泣きべそをかきながら電の捜索を続けている。
「……うう……ぐずん……電のステルス性は異常だよぉ……うえぇん……全然見つからんよぉ……へぐぅ……」
どうしても見つからない。
提督はブツンッとキレて叫び上げる。
「電ーッ! 俺の名を呼んでみろぉ! 俺は誰だぁ! 提督だぁ! あなたの提督ッ! みんなの提督ッ! お忘れですかぁ?!」
「うるせーッ!」
“がつぅんッ”
どこからか缶が飛んできて、提督の頭に命中した。
深夜に叫べば当然ながら安眠妨害になる。
戦闘で疲れ切っている艦娘としては怒り出すのも当たり前である。
ところで飛んできた缶であるが、缶と言っても空き缶ではなく、中身の入ったジュースの缶……でもなく、強化型艦本式缶である。
あわや殺人事件という状況の中、提督は奇跡的に助かった。
「くそぉ……無駄に血と体力を失ったぞぉ……」
その時である。
遠くの柱の陰からこちらを見つめている電を発見した。
「電ッ! 見つけたぞッ! いいか、そこにいろッ! 動くなッ! 動かないでくれぇ! 頼むぞ、電ッ!」
血まみれの提督は目を血走らせて電に向かって突っ走る。
その瞬間、電は闇に身を溶け込ませ、そのまま姿を消してしまう。
「うぉい! 動くなって言った! 動くなって言ったぞぉ! うわああぁぁぁんッ! 電ッ! 電ちゃんッ! もはや電サマぁ! 頼むから逃げないでおくれよぉ! 提督からのお願いだ!」
返事はない。
静寂が提督を包み込む。
――――――
――――
――
この日、提督によるひとり捜索活動は明け方まで続いたという。
(任務達成?)
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