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乱世の確率事象改変
安息の住処
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来るようになるの!」

 それでも出来なかったらどうするんだ、と頭を掠めたがさすがに言えない。
 しかし下手な希望を持たせて徒労だったと知れば、来る絶望は予測できない程だろうに。
 ただ、彼は直ぐに二人に笑いかけた。目を燦々と輝かせて。

「うん……そうだ。ロマンは諦めないからこそロマンだった! ありがとう二人共。なら楽進殿、修行は集中しないとダメだし、時間が掛かるだろうから乱世が終わった時にでも……クク、『俺』に教えてくれ」

 何故か間で言葉が止まった。
 自嘲のような笑みを零した彼は一寸何を迷ったのだろうか。わたしには分からなかった。
 月の表情が一寸だけ翳った気がしたが、そちらを見ると、いつものように柔らかく微笑んでくれる。
 問題なさそうだから気にせず、そのまま返答を行おう。

「分かりました。約束します。ではその代わりに乱世の間に体術の稽古をつけて貰えませんか?」
「体術?」
「はい、武器を使いながらはわたしの戦い方ではありません。しかし体運び一つだけだとしても取り込んでみたいと思うんです」
「あー……じゃあ時間のある時に組み手でもしよう。自分の動きに問題が無いように盗んでくれ。教えるの下手なんだ」
「構いません。よろしくお願いします」

 そう言って手を差し出すと、照れながらも握ってくれた。
 多分、武については、というのが付く。見た事も無い動きなので我流で間違いないから、下手に教えてわたしの型を崩してしまう事を気にしてくれたんだ。
 教えるのが下手なわけが無い。警備隊の向上も問題なく行えて、子供達に対しても新しい遊び方を分かり易く説明出来るほどなのだから。

「じゃあ沙和も徐晃さんに一つお願いするのー」

 突然何を言い出すのかと思って沙和を見ると、いつもと変わらない優しい笑み……ながらも、大売出しを見極める女の目をしていた。

「何かな?」
「風ちゃんから羅馬とか大陸の外の事も知ってるって聞いたの。だから……外の国の可愛い服を教えて欲しいなーって」

 がっくりと、自然と肩が落ち、ため息が漏れ出る。
 自分のように武の向上を目指すのか、とも少しは思ったが、案の定というか彼女はおしゃれの事を考えていた。
 この分だと真桜の方も新しい絡繰りの開発を手伝って欲しいとか言いそうだ。いや、徐晃殿が今のお願い受けたら、沙和が真桜にそれを話すから確定だろう。

「……うーん。それも時間がある時になるなぁ」
「全っ然構わないの!」
「じゃあそれで」
「ありがとなのー♪」

 歓喜のままに小躍りしてから、沙和も同じように握手を交わした。

「ま、ゆえゆえと同じで、楽進殿や于禁殿みたいな可愛い女の子なら何着ても似合うだろうし問題ないか」
「へうっ」
「なっ」
「おおー……」
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