初めての都市
シキの苦悩
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おくよ」
精一杯の作り笑顔をしながら、シキは商店街を早歩きで通る。
有名になりすぎたせいか、こういった場所で買い物がしずらくなってしまった。
ちなみにメイガスの家にはもうお世話になっていない。シキがいると分かれば、あの家に大勢の人が集まるだろう。そうなれば、メイガス、アイナ、メイシェンに迷惑がかかる。
大泣きするメイシェンや大反対をするアイナに困ったシキは、トリンデン家の近所のアパートを借りることにした。
「……あー、疲れた」
部屋に帰ったシキは、布団にパタンと横になる。
肉体的疲労もそうだが、精神的な疲労が凄まじい。連日の人が訪ねてくるのだ、いくら大人びているシキでも限界はある。
だからこそ、暗い考えが頭によぎる。
「……」
もしも、と思う。
もしも、あの場にメイシェンやナルキ、ミィフィがいなかったらシキはあの都民たちを見捨てていたかもしれない。
時々、そのほうが良かったんじゃないかと思うことがある。
あの戦いで、少なからず犠牲は出た。
その遺族たちは揃ってこう言う。
『君がもっと早く戦場に出てたら、彼らは死ななかった』
馬鹿らしいと、シキは切り捨てる。
汚染獣との戦いは苛烈だ。ほんの一瞬、たった一回のミスで死ぬのが汚染獣戦だ。
どんなベテランであっても、汚染獣の一撃を受け汚染物質に身を焼かれる姿をシキは何度も見てきた。
だが、それは武芸者としてのシキの意見だ。
「……子供に何、期待してんだよ」
ズキリと胸が痛む。
家族が失われる痛みをシキはよく知ってる。
泣き叫ぶ遺族たちの姿を、シキは感情を殺して接した。そうしなければ、罪悪感で押しつぶされそうだったからだ。
そうやって思考のドツボに嵌りそうだった時、インターフォンが鳴った。
ムクリと起き上がる。
このまま居留守を使ってもいいが、一人が嫌だったシキはドアを無造作に開ける。
思わず力が入ってしまい、音を立てて勢い良く開いた扉の向こうにいたのは……。
「あう!?」
「め、メイ?」
メイシェンだった。
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