第百七十一話 三河口の戦いその四
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「そのうえで織田の陣を突き破るぞ」
「敵の左翼を攻め揺さぶりを仕掛けるうえで」
「そうされますか」
「そうじゃ、では行くぞ」
「はっ、では」
「今より」
二十四将の残る者達、そして幸村が応えた。そのうえでだった。
武田軍四万が信玄自らが率いこれまで以上の攻めに入った、その勢いはまさに。
紅蓮の炎だった、織田の諸将も兵達もその勢いを見て肝を潰して叫んだ。
「き、来たぞ!」
「あの兜、間違いない!」
「武田信玄じゃ!」
「甲斐の虎が来たぞ!」
誰もが信玄を見た、陣頭に立ち自ら采配を執る彼を。ただ主が陣頭にいるだけではなかった。その彼の采配の下でだ。
二十四将も兵達もこれまで以上の動きを見せた、それでだった。
織田家の中でも随一の猛将である柴田もだ、戦慄と共に言った。
「これは・・・・・・まさに虎じゃ」
「うむ、虎じゃ」
その通りだとだ、柴田と並ぶ織田家の武の柱佐久間も唸った。
「甲斐の虎が来たわ」
「その通りじゃな、しかしじゃ」
「怯むな!」
佐久間が最初に兵達に激を飛ばした。
「ここは、じゃよいな!」
「一歩も引くでない!」
柴田もここで叫んだ。
「よいな、ここでじゃ!」
「槍を構えよ!」
滝川もここで兵達に命じた。
「敵を近寄せるな!」
「鉄砲隊、撃てばすぐに弾を込めてまた撃て!」
今度は前田が言った。
「よいな、暇はないぞ!」
「弓矢隊、数では負けておらぬ!」
原田は弓隊に命じていた。
「このまま放ち続けよ!」
「は、はい!」
「それでは」
兵達もだった、彼等に応えて。
それぞれの武器で戦う、そして。
信長もだ、周りの者達にこう言った。
「信玄入道が来ておるか、ではな」
「?まさか殿」
「殿も」
「そうじゃ、信玄入道のところに参る」
そうするというのだ。
「そしてあの者と直接ぶつかるとしよう」
「殿、それは」
幾ら何でもとだ、武井が信長に言ってきた。
「危ういかと」
「安心せよ、矢面に出る訳ではない」
「だからですか」
「そうじゃ、この目であの御仁も見たい」
信玄をだ、その目でだというのだ。
「だからじゃ、よいな」
「では我等も」
武井は信長の言葉を聞いて彼を止めることはしないことにした、だがそのうえでこう信長に言ったのである。
「供に」
「来るか」
「はい、そうさせてもらいます」
「殿は我等がお守りします」
管野も言ってきた。
「ですから」
「そうか、では頼むぞ」
「はい」
こうしてだった、信長は本陣にいる諸将と共に信玄が攻めているそこに向かった。するとそこはまさに炎が木に焼かれている様に攻められていた。
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