第百七十一話 三河口の戦いその三
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騎馬隊はそのまま進んだ、鉄砲の弾と音にも怯まず馬蹄が地響きを立ててそのうえで迫って来る。だが。
信長の采配が動いた、それでだった。
長槍が突き出される、それで騎馬隊を阻まんとしていた。
「くっ、今度は槍か!」
「それを出してきたか!」
武田の者達はその槍に歯噛みした、しかもその槍達はというと。
「長いのう」
「何という長さじゃ」
「これでは攻められぬぞ」
「どうすればよいのじゃ」
騎馬隊は止むを得ず槍の直前で止まった、刺される者は僅かだったがこれで動きが止まってしまった。これではだった。
打つ手がない様に思われた、だが。
今度はだ、原が兵達に言った。
「弓矢を出せ」
「弓ですか」
「それで相手を」
「突き進めぬならば射るだけじゃ」
こう言うのだった。
「ならよいな」
「はい、では」
「ここは」
「撃つのじゃ」
そうしてだというのだ。
「織田の陣を攻めよ、よいな」
「畏まりました、それでは」
「我等は」
「うむ、撃て」
まさにそうしてだと告げてだ、実際に。
原が最初に弓矢を出した、そして。
他の騎馬武者達も弓矢を出してきた、それで織田の槍兵達を打たんとしてくる。しかも騎馬武者だけではなく。
武田の足軽達も来た、彼等も鉄砲を放ち。
そして石を投げ弓矢を出してきた、彼等も負けてはいなかった。
だが信長はその状況を見ても冷静だった、それで。
また采配を動かした、今度出すのは。
「弓矢じゃ」
「このままですな」
「手筈通り」
「うむ、放たたせよ」
そうして攻めよというのだ。
「よいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
森と池田が応える、こうしてだった。
織田家の弓兵達が長弓を構え弓を斜め上に次から次に放った、すると矢が凄まじい唸り声を挙げて落下してだった。
武田の軍勢を襲う、今度は彼等が弓にやられる番だった。
再び鉄砲が鳴り武田を襲う、これでまた多くの者が倒れた。
織田軍は武田を押す様に見えた、しかしそれでもだった。
信玄もまた冷静だった、それでこう言うのだった。
「案ずるな、正面から駄目ならじゃ」
「それならですな」
「ここは」
「典厩に伝えよ」
すぐ下の弟の彼にというのだ。
「五千を率い敵の左翼に回れ」
「そしてその左翼をですな」
「攻めて」
「うむ、敵の動きを乱せ」
そうせよというのだ、そしてさらにだった。
「補佐に真田幸隆を連れてな」
「はい、では」
その真田が応えた、そのうえで。
二人が五千の兵を率いて向かう、そしてだった。
信玄は馬上からだ、こう言ったのだった。
「では他の者はじゃ」
「はい、我等は」
「これよりですな」
「わしが前に出る」
前線にという
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