第百七十一話 三河口の戦いその一
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第百七十一話 三河口の戦い
朝になった、織田も武田も日が昇る前に皆起きた。それでだった。
信長は全軍にだ、起きてすぐに自ら具足を着け陣羽織を羽織ってから言った。
「皆それぞれ具足を着けよ、そしてじゃ」
「飯ですな」
「それですな」
「槍と鉄砲を手にしたままでじゃ」
そのうえでだというのだ。
「飯を食え、よいな」
「はい、わかりました」
「それではすぐに」
「急ぐのじゃ」
具足を着けて飯を食えというのだ。
「ではよいな」
「急いで整えて」
「そしてですな」
「間もなくじゃ」
信長はまだ暗い中で言う、まだ陣中の松明は消えていない。
「武田が来るわ」
「武田に先に攻められぬ様に」
「今のうちに」
「整えよ、よいな」
「では」
こうしたことを話してだった、そのうえで。
彼等は具足を着け飯を食った。そのうえで陣を整えた。
それは武田もだった、彼等もだ。
具足を着け飯を食っていた、その中で信玄は全軍に言った。
「さて、日の出と共にじゃ」
「はい、戦ですな」
「攻めますな」
「わしも行く」
信玄もだというのだ。
「四万五千でな」
「全ての兵を使い」
「そしてですな」
「織田を攻める」
武田の前にいる彼等をだというのだ。
「その為じゃ。急ぐ様にな」
「畏まりました、それでは」
「すぐに」
「それでじゃが」
その戦の用意の中でだ、信玄は周りにこのことを問うた。
「岩村のことじゃが」
「攻めあぐねておるのですな」
「どうにも」
「そうじゃな。陽動で送ったが」
その五千の兵をというのだ。
「やはり城は攻め落とせぬか」
「敵もしぶとく」
「幾ら攻めようとも」
「確か帰蝶殿じゃったな」
信玄はここでこの名前を出した。
「織田信長の正室のな」
「女だてらにですか」
「戦場で戦っておりますか」
「何、今は珍しいことではない」
この戦国の世ではというのだ。
「それもな。だからな」
「特にですか」
「このことは」
「言うべきことでもない、しかし強いのじゃな」
「かなり」
内藤がこう言ってきた。
「秋山殿も攻めあぐねておられるとか」
「無理はしておらぬな」
「はい、城が陥ちぬくいと見て」
こう判断してだ、秋山はどうしたかというと。
「囲みそのうえで」
「城を攻めておらぬか」
「その様です」
「それでよいのじゃ」
信玄もそれでよいとした。
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