クリスマスの攻防
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「御免」
「あっきれた。じゃあクリスマスなのにここで終わりなのね」
「好き放題言ってくれるけどさ」
(やった)
また怒った弘樹を見て智子はほくそ笑んだ。ただし心の中で。
「何?」
「そういう智子ちゃんは何か考えているの?」
「勿論よ」
智子は胸を張ってこう答えた。これで勝ったと思った。デートは何時の間にか勝負になってしまっていた。
「そうじゃなきゃ来ないわよ」
「ここにまで」
「ええ。まあその時は任せて」
内心会心の笑みを浮かべずにはいられなかった。
「悪いようにはしないから」
「それって悪いようにする時の言葉じゃないの?」
「そうだったかしら」
ここではあえてとぼけてみせる。
「少なくとも弘樹君には悪いようにはしないわよ」
「それ以上に智子ちゃんにもだね」
「それは当然でしょ」
居直ってももう勝利は動かないと確信しているからこそ言える言葉であった。
「まあ安心してよ。本当に悪いようにはならないから」
「どうするつもりなのさ」
「まあそれはその時になってからのお楽しみ」
(その為に背伸びしたんだから)
智子が勝負をかけてきたのは外の服装だけではなかったのだ。中の服装もである。むしろこちらの方が彼女にとって切り札であると言ってよかった。だが今はそれは出さない。
(見ていらっしゃい)
智子はその時の勝負に意気込んでいた。
(これで弘樹君に勝ってやるんだから)
そう思いながらデートを続けた。午後は弘樹の予定通りのコースを周り過ごした。そして夕方になった。
「そろそろ終わりね」
智子は暗くなってきたテーマパークを見回しながら弘樹に声をかけてきた。
「この後はわかってるわよね」
「うん」
やはりとりあえず頷く。弘樹はそれでも言った。
「その前に見て欲しいものがあるんだけれど」
「何かしら」
「二つあるんだけれどね」
「二つ」
「うん、まずはこれ」
そう言いながら懐から何か出してきた。
「僕からのクリスマスプレゼント」
「クリスマスプレゼント」
「うん。メリークリスマス」
そして智子の首にそれをかけてきた。
それはネックレスであった。銀の小さなネックレスであった。雪の結晶を形作ったものであった。
「クリスマスだからね。雪のにしたんだ」
「そうだったの」
智子は自分の首にかけられたその小さなネックレスをまさぐりながら応じていた。見ればそれは暗くなっている中でキラキラと光っていた。まるで氷の様に。
「どうかな。気に入ってもらえたら嬉しいけれど」
「気に入らない筈ないでしょ」
智子はそう答えた。
「こんなもの貰えるなんて」
捻くれた様子
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