クリスマスの攻防
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いた。白く、そして唇がほんのりと赤い。あえてうっすらと化粧をしているようであった。
服は膝を隠すまでの光沢のある硬い生地のスカートで黒いブーツを履いている。そしてブラウスは白でかなりラフに着こなしている。そしてその上から皮のハーフコートを着ていた。
「ん?どうしたの」
「いや、ちょっと」
いつもとは全く違う感じの智子に唖然としたとは言えなかった。だがそれは智子に見抜かれていた。
「驚いた?」
「えっ、何に」
「私の格好に。勉強してきたのよ」
「ファッションを?」
「そうよ。この日の為にね」
くすりと笑ってそれに応える。
「いいでしょ、なかなか」
「うん」
認めたら負けであるが認めてしまった。
「色々とね。雑誌読んだのよ。苦労したんだから」
「クリスマスの為だけに?」
「まあね。だってこの日は特別だから」
そう言いながらも主導権を握りにかかってきた。弘樹の手に自分の手を絡める。
「努力したんだから。弘樹君も努力の結果見せてよね」
「う、うん」
と言ってもこうなってしまっては智子に従うしかなかった。彼は智子に言われるままテーマパークに入った。そしてその後は全て彼女のペースであった。気がつけばもうお昼を過ぎていた。
「ねえ」
二人は軽食を摂っていた。サンドイッチにコーヒーで軽い昼食を摂っていたのである。
「ここが終わったらどうするの」
二人は店の外の席に向かい合って座っていた。智子は前に座る弘樹に対して問うてきた。
「ここが終わったら?」
「そうよ。それで終わりってわけじゃないでしょ」
「まあ」
それを言われてしまった、と内心思った。実はテーマパークのことばかり考えていてその後のことは全く考えていなかったのであった。迂闊であった。
「どうしようかな」
「どうしようかなって」
呆れた声を出してはみせたが実は内心やったと思っていた。智子は言葉を続けた。
「まさかそれでバイバイってわけじゃないでしょうね」
「駄目かな」
「駄目に決まってるでしょ。今日は何の日だと思ってるのよ」
怒った声を出してみせてはいるが心の中では違う。
「クリスマスよ、クリスマス」
「うん」
弘樹は押されるがままに頷いた。
「こんな日にテーマパーク行ってそれで終わりだなんて。何もわかってないわね」
そう言いながら密かに弘樹を挑発する。そして弘樹はそれに乗ってきた。
「じゃあどうすればいいんだよ」
「何も考えてなかったの?」
「そりゃあ」
本当に何も考えていなかったから答えられる筈もなかった。口から出まかせを言ってもとても誤魔化せる状況でないのは智子の態度から明らかであった。弘樹は観念していた。
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