クリスマスの攻防
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「お化け屋敷はどう?」
「あそこのお化け屋敷はね」
そう言って苦笑いを浮かべた。
「恐くないから。別にいいわ」
「そう」
「やっぱり恐くないとね。面白くないじゃない」
「よかった」
弘樹はそれを聞いて胸をホッと撫で下ろした。どうやら彼はそれが苦手であるらしい。
「それじゃあお化け屋敷は行かない、と」
「うん」
念を押してきた。智子もそれに頷いた。彼女は彼女で弘樹のそうしたところには気付いていなかったが。
「後はその日で決める、と」
「アバウトでいいじゃない。どうせその日になるとわからないこともあるし」
「それはそうだけれど」
弘樹は釈然としないところがあったがそれに同意することにした。デートの時はいつもこうである。智子が引っ張る形になる。それはいつものことであるのでもう慣れていることであったのだ。
「それじゃあまあそういうことで」
「うん」
これでおおよそのことは決まった。待ち合わせの場所と時間も決めた。こうして彼等はその日を待つことにしたのであった。
そしてクリスマスの朝。弘樹はテーマパークのある駅の入口で智子を待っていた。髪の毛を櫛で整え服も膝までの黒いコートに赤いジャケット、そして黒いカッターにズボンというかなり背伸びした服装であった。靴も皮で黒である。無理をしているとも見える姿であった。
入口の前で智子を待つ。時計を見ればもう来てもいい時間である。
「来るかな、約束通り」
弘樹は少し不安になった。智子は時間にルーズで遅れることも多いのだ。学校での遅刻も多い。だからいささか不安なのである。
彼の周りではカップル達が並んでテーマパークの方に歩いていた。クリスマスは楽しい場所、ムードのある場所で過ごしたい、その思いはどうやら皆同じようである。そしてその中には弘樹と智子も入る予定である。
あくまで予定ではあるが。智子が若し来なかったらそれは終わりである。流石にすっぽかしたことはなかったが不安であるのには変わりがない。弘樹はかなりそわそわしていた。
電車が止まった。そして中から人が出て来る。見ればやはりカップルばかりだ。彼はここに智子がいるのかな、と思った。正確に言えばいて欲しいと思った。
「どうかな」
彼は期待した。その期待が裏切られる可能性もある。だが今回は期待は彼を裏切らなかった。
「お待たせ」
智子の声がした。彼はそれを受けて駅の改札口を見た。見ればそこに彼女がいた。
「あ・・・・・・」
弘樹は智子を見て声をあげずにはいられなかった。それ程今の智子は普段とは違っていたのだ。
髪形はいつもと変わらない。だがしっかりと櫛も通し、綺麗にまとめている。整髪料で濡れた感じにしていた。
顔も何処か違って
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