クリスマスの攻防
[13/13]
[9]前 最初
け肘をついて左手の甲の上に顎を乗せている。そしてこう言葉を返してきたのだ。
「大人にってそんなのだけじゃないでしょ」
「あら、言うわね」
クラスメイト達はそれを聞いて面白そうに笑った。
「今までデートっていえば食べてばかりだったのに」
「じゃあ何が大人だっていうのかしら。答えて欲しいわね」
「それはデートしてみればわかるわ」
智子はくすりと笑ってこう返した。
「それでわかるわよ」
そう言いながらクラスメイト達を見上げる。その目はもう冬休みまでの智子の目ではなかった。
「そんなものかしら」
クラスメイト達は智子のその態度と目を見て顔を見合わせた。そしてこう言い合った。
「どうなのかなあ」
「わかると思うわよ、本当に」
「キスとかもなしに?」
「キスなんてしなくてもね」
智子はキスも否定した。
「あんた達の言う大人になれるわよ」
「ということはキスも結局まだなのね」
「ええ」
それは認めた。
「だってそんなの必要なかったから」
「そんなデートもあるの」
「あんたはまたそればっかりじゃないの」
一人こう言ったが他のクラスメイト達に窘められてしまった。
「たまにはホテル以外に行ったら?」
「あっ、しまった」
「ホテルに行かなくてもいいじゃない」
智子はそれに対しても言った。
「ホテルなんかに行かなくてもデートはできるわよ」
「そりゃまあそうだけれど」
「大事なのはね、勝負なのよ」
「勝負?」
「そう。それでね」
智子は言った。
「勝っても負けてもいいわ。そこからあんた達の言う大人になれるかもよ」
「そうなんだ」
「そうよ」
智子は最後にまた笑った。
「大人になれるのはね、ちょっとしたことがあればいいのよ」
「ちょっとしたこと」
「そう。私はクリスマスだったけれどね。まああんた達も私みたいなデートしてみたら?」
そう言ってくすりと笑った。そしてそのまま雑誌を開いた。クリスマス前に読んでいた雑誌だ。
「こんなの読みながらね」
「それ読んだらいいの?」
「読んで見つけるのよ。それをね」
クラスメイト達を周りに集めて言う。言いながら心の中では今度は弘樹に勝とうと思っていた。
しかし同時に勝っても負けてもいいと思っていた。それでまた何かを見られたら。智子は今それをデートに見ていたのであった。
クリスマスの攻防 完
2005・11・5
[9]前 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ