クリスマスの攻防
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子はきっぱりとこう言った。
「じゃあ使ってもいいじゃない。そう思わない?」
「それはまあそうだけれどさ」
それでも不満はあった。
「使い過ぎでしょ」
「お洒落とかにもちゃんと使ってるわよ」
「いや、割合で言うと比較にならないでしょ」
弘樹はそれでも言った。
「もう全然。今も食べてるしさ」
「だから他に何に使うのよ」
「そう言われると言葉に詰まるけれどね」
けれど言う。やはり気になるからだ。
「映画館も行くしショッピングもするし。いいじゃない」
「もっと他にないの?」
「何がしたいのよ」
智子はハンバーガーを食べ終えた。そして手を拭きながら尋ねてきた。
「私の家にでも来るつもり?何なら手料理御馳走するわよ」
「それもいいけれどね」
「いいの」
「いや、勿論それだけじゃないけれどさ」
ここから先は残念ながら言うわけにはいかなかった。これを男から言うことはできないと弘樹は思っていた。これもまた駆け引きである。今のやりとりも駆け引きであった。
「それはまあ」
「弘樹君の家に行ってもいいわよ」
「あっ、それは駄目」
「どうして?」
「お袋がいつもいるから。悪いけれど駄目なんだ」
「そう」
流石にこれは気まずい。涙を呑んで断るしかなかった。
「そうだなあ」
弘樹は考えながら言った。
「もうすぐクリスマスだし」
「鳥でも食べる?ローストチキン」
「だからそれが駄目なんでしょ」
弘樹はそう言って智子を大人しくさせた。
「他にやることあるじゃないか」
「クリスマスだったらそれしかないじゃない」
「だからね」
弘樹はたまりかねたように言った。
「クリスマスっていったら何かこう違うじゃない」
「どう違うのよ」
「だからさあ」
いい加減辟易しながらも言う。
「聖なる一日っていうか」
「うん」
「せめてこの日位はそれなりに普通のデートしようよ。いつも智子ちゃんのリードになってるしさ」
「私がリードすると食べてばかりと」
「悪いけれどそれが事実だと思うよ。だから今はね」
彼は言葉を続けた。
「クリスマスだけは僕に任せてよ。場所も考えるし」
「雑誌でも見て?」
「まあそうしたことはこっちでやるから。いいよね」
「そうね」
智子は暫し考えた後で答えた。答えながら手にはコーラを持っている。そしてストローで吸いはじめた。
「いいわ。私は別に」
「そう、よかった」
とりあえず第一関門は突破したと思った。だが弘樹はわかっていた。大変なのはこれからだと。まるではじめてのデートの時のようだった。その時は待ち合わせていきなり智子がケーキ屋に行こうと言って終わりだ
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