第5章 契約
第94話 闇にひそむもの
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合で切り抜けようとしたり、湖の乙女……水の精霊王と友誼の元に契約を結んだりする存在が、ただの農夫だったとは考えられません。
そう考えるならば、前世の俺も、現在の俺とそう違いのない人生を歩んで居たと考える方が妥当。そして、その時も今と同じようにタバサは俺の相棒で、彼女に某かの呪具を渡して居たと仮定。その時に使用して居た呪具を、今回の人生でも彼女が手に入れたとしたのなら……。
「そもそも御二人が生きて居たのはこの世界の直接の過去ではない、何処か別の世界での話。そんな別世界で二人の間に絆を結んだ証のアイテムが有ったとして、それを偶然、この世界で手に入れるなどと言う事が有り得ると思いますか?」
……かなり低い確率だが可能。そう結論付けた俺の考えを完全に破壊し尽くす言葉を続けるヴィルヘルム。
もし、この薄ら笑いを浮かべた男が言うように、俺やタバサが生きて居たのがこのハルケギニア世界ではない何処か別の平行世界だったのなら、その世界でふたりの間の絆を証明するアイテムが有ったとしても……。
このハルケギニア世界で、そんな異世界のアイテムを偶然手に入れる事など不可能と言っても良いレベル。
「これは偶然などではなく必然。貴方……武神忍と言う名前の器に宿った魂を持つ存在を、オルレアン家の姫と言う器に宿った魂を持つ存在が召喚しなければ問題が有った存在。神と呼ばれる存在が居て、その神の手の平の上で御二人は踊り続けて居るに過ぎないのですから」
今までと表面上は同じ。しかし、それまでとは明らかに違う笑み……その瞬間のヤツの笑みからは、喜び、悲しみ、嘲り、怒り。人間が持ち得るすべての感情を合わせ、其処に暗い情念を濃く流し込んだかのような響きを伴い、遙か彼方まで続く闇の向こう側から聞こえて来た。
そう。その瞬間、ヤツは俺の目の前にいながら、何故か声だけは遙か彼方から聞こえて来たように俺は感じたのだ。
此の世ではない。まして、彼の世ですらない、何処か遠くの世界から……。
涼しげな瞳で俺の瞳を覗き込んで来るヴィルヘルム。ヤツが放つ異質で異様な……とても人間とは思えない瞳に強く引き込まれるようで……。
思わず自らの瞳を閉じ、強く頭を振る俺。これはマズイ兆候。どんな魔法で俺の精神を操ろうとして来るか判ったモンじゃない。
「もうそろそろ解放されても良いんじゃないですか。……貴方も。それに、貴方と言う強い魂に惹かれ、業を重ねつつある魂たちも」
暗闇に光る一対の瞳。……いや、額にも輝いている物が存在する。これは瞳? それとも、ルーンの輝きか?
そして、その暗闇から発せられる言葉は甘く――
業を重ねつつある魂。それはおそらく、俺と共に在る事を望んだ魂……タバサの事。
いや、ヤツは魂たちと複数
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