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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第94話 闇にひそむもの
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彼の周囲には決められた人間しか入り込めないように成って居るのです。
 彼。忍さんが世界に絶望したり、諦めたりしないように、人間関係と言う鎖で縛って自分たちの都合が悪い未来は排除している連中が居るんですよ」

 意味不明の台詞を続けるヴィルヘルム。蒼き月光と言うスポットライトを浴び、世界の中心に立つその姿は舞台の主人公の如し。世界のすべては彼の為に存在し、彼以外はすべて脇役。
 正に百万に愛されしモノと言うに相応しい姿。

 そして、その瞬間、一度は確かに取り戻して居た正常な世界。俺やタバサが暮らして来た世界から、ヤツらが暮らす世界へとの境界が曖昧と成って来る。

 向こう側から何かが息を潜め、俺やタバサ。そして、ヴィルヘルムの一挙手一投足をじっと見つめて居るような気さえして来る。そんな、意味不明の大声を上げて、この場から走り去りたいと願うような嫌な気配。
 この空間は間違いなく、新しい異界化現象に支配され始めていた。

「おや、その顔は僕の言葉をまったく信用していない、と言う顔ですね?」

 相変わらず、何か揶揄されているような口調で問い掛けて来るヴィルヘルム。但し、信用するも何も、こんな相手の話をイチイチ信用して居ては、どんな落とし穴に落とされるか判りません。
 こう言う相手の話は……。

「ひとつの案。可能性としては聞いて置いてやる。その程度やな」

 冷たく、まるでタバサや湖の乙女の如くそう答える俺。それに、そもそも、所詮は地仙に過ぎない俺が絶望しようが、何かを諦めようが、そんな事に関係なく世界には朝が訪れ、そして時間は過ぎ去って行く物です。
 確かに今、俺がこのハルケギニア世界に影響を与えて居るのは認めます。ですが、そうだからと言って、このハルケギニア世界に取っての俺が代わりの居ない――絶対の存在である訳がないでしょうが。
 俺がやらなければ、その代わりに何処かの誰かが、俺のやって居る仕事を熟す事と成るはずです。

 実際、コッチの世界では判りませんが、向こう。……俺が生まれてから十六年間暮らして来た世界ならば、俺程度の術者など腐るほど存在して居ましたから。
 世界に取って唯一絶対の存在などいない。永遠に栄える王朝も存在しなければ、廃れない宗教も存在しない。まして、一人の人間など――

「確かに今の貴方ではその辺りの答えが妥当ですか」

 妙に上機嫌……と言うか、顔に貼り付いたままの笑顔でそう答えるヴィルヘルム。しかし、その視線を俺の元から――

「それでも、シャルロット姫の意見は違って居ると思いますけどね」

 俺の傍ら――。自らの親友。突然この場に現れたキュルケから、何の前振りもなく行き成りゲルマニアへの亡命を求められても、普段とまったく変わりない表情で切り返す。この娘は、例えこの瞬間
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