第5章 契約
第94話 闇にひそむもの
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強い存在感を放ちながら……。
そう。ラ・ロシェールが大量の魔物に襲われたのも。
赤い風車のカジノが血と炎に沈んだのも。
岩塩採掘坑道が。そして、魔法学院が謎の異界化現象に覆われたのも。
「すべて誰か……人間が望んだからですよ」
そうそう。今回、あなた方に亡命を勧めたのは、アウグスタがそれを望んだから。
最後にそう締め括って、相変わらず顔に貼り付けたままの東洋的微笑みで俺を見つめた。
その瞬間。背後から吹き付けて来た冷たい風がむき出しのうなじを弄り、背筋にだけ感じて居た悪寒が、終にうなじにまで到達した。
ただ……。
成るほどね。テスカトリポカの顕現を防いだだけでは、今回の事件は終わった訳ではなかった。そう言う事ですか。
相変わらず、俺とタバサの進む先に用意されている事件の厄介さに、心の中だけで軽く舌打ち。そして、表面上ではごく自然な形で一歩、タバサの傍に近付く俺。そもそも、この場にヤツ。ヴィルヘルムと名乗る人外の存在が顕われた意図が読めない以上、これから先に何が起きても不思議じゃありません。
しかし、そうかと言って、あからさまな術の行使は躊躇われる状態。何故ならば、相手が単なる系統魔法使いなら精霊の動きを感じる事が出来ないので、コチラが術を行使した事にさえ気付かない可能性が高いでしょう。しかし、この目の前の薄ら笑いを浮かべ続けるイケメンはそんなレベルの術者とは思えません。
次のヤツの行動の予測が付きませんから。
そんな俺の普段通りの行動。しかし、
「アウグスタ。彼に色仕掛けが通用しなかった理由が判ったでしょう。
彼は、最初から貴女の姿など瞳に映してはいなかったんですよ」
まるで俺が貧乳、更にメガネ属性有りの人間と決めつけるかのような台詞を投げ掛けて来るヴィルヘルム。
確かに、普段、俺の左右に立つ少女。タバサや湖の乙女を見ていたら、そう言う勘違いをするかも知れません。しかし、そもそも俺の好みの女性のタイプは違う。それに、キュルケが幾ら言い寄って来たとしても俺が彼女に靡く訳は有りません。
何故ならば、彼女に関しては始めからその行動を警戒していた相手、ですから。
タバサの正体が反乱の疑いのあったガリアの大公の娘だと分かってから以降は特に……。
そんな事を考えながらも、あまり意味のない反論などせず、そのまま推移を見守る俺。時間が過ぎれば過ぎる程、状況が有利と成るのは俺たちの方です。
ルルド村に残して来た連中が残敵の掃討が終ればこちらに駆けつけて来る事は確実ですし、リュティスに残して来た湖の乙女や妖精女王もやって来る可能性が高いのですから。
しかし……。
「彼は、その前世からの約束が有り、
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