第5章 契約
第94話 闇にひそむもの
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して話し掛けるヴィルヘルム皇太子。
しかし、……人類の敵か。
「自分から積極的に敵に成った覚えはないけどな」
何故か、そう呼ばれて居た時期が有ったようです。……地球世界の龍種には。
もっとも、この薄ら笑いを浮かべたイケメンにそんな事を言われる謂れは有りませんが。
それに、
「そもそも、その敵と味方。その単純に二分割する思考が危険なんやろうが」
味方でなければ、それはすべて敵。敵だからどんな手段を使っても排除して良い。今回、ロマリアが起こそうとしている聖戦などはその論法が行き付いた到着点と言うべきトコロでしょうか。
確かに、そんなに単純――。世界や人間の思考が単純な構造で出来上がっているのなら、すべての敵を殺し尽くせばすべて終わる。そして、その後には敵が存在しない楽園。輝かしい希望に満ちた未来が待って居るでしょう。
しかし、残念ながら世界はそんなに単純ではない。そんなに単純ならば、世界はその思想の元にとっくの昔に統一されていたはず。
現実には未だ――。俺が暮らして居た世界も。そして、このハルケギニア世界も完全に味方しか存在しない世界と言うには程遠い世界と言わざるを得ない状況。
新教と旧教で争っているロマリア。つい最近まで王と王弟で争っていたアルビオンとガリア。ゲルマニアも現皇帝の兄弟は天寿を全うした人物が存在していない。
この狭い単位の国内でさえ、いや、同じ血を分けた家族の間でさえ、様々な思想や利権などによって一枚岩とは言えない状況。この上、世界の統一など……。
まさに夢物語。
まして、
「本当の意味で人類の敵と呼ばれるのは、オマエさんと、あの自称名付けざられし者の方と違うのか」
直球でど真ん中。駆け引きも何も存在しない勝負球を投じる俺。コイツの目の前では流石にウカツな動きは出来ない相手。自らの直感を信じるのなら、この場は素直に撤退をして後日に再戦を行うべき相手及び状況。
背筋に感じて居る悪寒は人外の存在。それも、非常に危険な存在を前にした時にのみに感じた事の有る悪寒。
こんな時は、ほんの些細な風の音にさえ神経が過敏に反応して仕舞い、冷静な判断を下せなく成って仕舞う事も少なく有りませんから。
俺の問いを聞いたヴィルヘルムが笑う。しかし、それは人ならざる者が、人間の振りをして無理に造り上げたかのような笑顔。そこからは温かみも、心が和むような色も一切感じる事はなかった。
そうして……。
「僕たちは、少なくとも人々の望んだ事以外は為しては居ません」
ぞっとする。闇自体が凝縮したかのような声が発せられる。それも、まるで自らが人間ではないかのような言葉が。
謳うように、笑うようにヴィルヘルムは続けた。奇妙に実在感の薄い、しかし、何故か異常に
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