第5章 契約
第94話 闇にひそむもの
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結婚は正に政略結婚。ヴィルヘルム一世には別に許嫁が居たのに、政略の為にアウグスタと結婚した為に、ふたりの結婚生活はずっと不幸だったと伝えられています。この地球世界の史実に重なる部分を感じるのも事実。
キュルケも、そして、新たに現われた自称商人のソルジーヴィオが何か答えを口にするその前に、俺は言葉を続けた。
「そもそも、ローマ帝国の皇帝一門に贈られる女性の称号をミドルネームに持って居る段階で、ロマリアとツェルプストー家の関係は疑うべきやな」
アウグスタ。これはアウグストゥスの女性形。言わずと知れた歴代のローマ皇帝の称号の内のひとつ。意味は尊厳者、威厳者などと言う意味。
其処にゲルマニア……つまり、地球世界のドイツにヴィルヘルムと言う名前の皇太子の登場。その皇太子と、ゲルマニアの皇帝を選ぶ事の出来る選帝侯の位を有する辺境伯の娘との関係は、ある程度、頭の片隅にでも置いて於くべきでしょう。
そもそも、選帝侯のシステムが有るゲルマニア。それも国内の基盤がそう盤石と言えるような状態ではないアルブレヒト統治下で、次期皇帝の后にトリステインの女王を招き入れる心算がゲルマニアに最初から有ったかと言うと甚だ疑問。
もし本当に始祖の血脈を自らの血統の中に入れる事が最大の目的ならば、さっさとトリステインのアンリエッタ女王との結婚話を進めていたでしょう。
但し、どちらかと言うと新教寄りのトリステイン王家の人間をゲルマニア王家に入れると、旧教が完全に勢力を持って居るゲルマニアでは、以後の治世に悪影響が出ない方が不思議と成りますから……。
まして、新たに組み入れたトリステインの方も北方……。ゲルマニアに近い方は基本的にロマリアを頂点とする旧教の勢力が強い地域に当たるのですが、南方。ガリアに近い地域は新教の方が強い勢力を持って居るので、無理に同化を計ろうとすると、トリステインと言う国が分裂する可能性も少なくは有りません。
例えば、地球世界のオランダとベルギーのように……。
俺の推測のみが響いていた世界。闇によって穢され、白によって覆い尽くされつつ有った世界に、軽薄な……更に聞き覚えのあるパチパチと言う音が響いた。
「流石、と言うべきですか」
出会ってからこの表情しか見た事がない表情。謎の、と言う形容詞が付くべき薄ら笑いを浮かべた状態で、自称商人のソルジーヴィオ改め、神聖ゲルマニア帝国皇太子ヴィルヘルムが何時ぞやの地下空洞の時と同じように、熱意のまったく籠っていない。しかし、ある程度の賞賛の色を着けた拍手を行って居た。
「僕たち。……ゲルマニアとロマリアの敵はこう言う人物なんですよ、アウグスタ」
いや、それ以外でもブリミル教や人類の敵でもありましたか。妙に嬉しそうな口調で、自らの傍らに立つ赤毛の少女に対
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