暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第94話 闇にひそむもの
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灌木に因り隠された森の中から新たに現われる人影。身長は俺と同じぐらい。髪は暗がりである事を差し引いたとしても黒であろうと言う事は容易に想像出来る頭髪。
 服装はこの真冬の夜中である事から考えると余りにも軽装であると言える、濃緑のブレザーに白のワイシャツ、ワインレッドのタイ。そして、黒のスラックス姿。
 まるで、日本の一般的な高校生のような服装。……と言うか、この服装はゴアルスハウゼンの村に現われた、自らの事を名付けざられし者だと名乗った青年とまったく同じ服装。

 そうして……。

「お久しぶりですね、忍さん。それに、シャルロット姫」

 謎の東洋的微笑みと共に登場した男性。色々な事件の背後に見え隠れする存在。

「自称ソルジーヴィオさんの御登場、……と言う訳か」

 額にナイフか何かで刻み込んだかのような傷……。まるでルーン文字を刻み込んだかのような傷をこちらに見せる青年に対して、かなり疲れた者の雰囲気でそう口にする俺。
 そして、ため息を吐くかのようにひとつ息を大きく吐き出す。戦闘が終わり、テスカトリポカの魔界から供給されて居た、穢れた……。俺に取っては有害と成りかねない呪力は、異界に繋がる次元孔が閉じた――元アルマンの魔物が倒された事により少なく成ったとは思います。が、しかし、それでも周辺の浄化を完全に行った訳ではないので、この行為は多少のリスクを伴う行為なのですが……。

 それでも、これから行う会話の前には必要な儀式。それぐらい重要な……更に気の滅入る問い掛けを行う心算ですから。
 それは……。

「もっとも、こう呼ぶべきですかな。神聖ゲルマニア帝国次期皇帝ヴィルヘルム一世と、その未来の后アウグスタ皇后……と」

 いや、もしかすると国名を俺の暮らしていた世界の歴史上そうで有った名前に改めた上で、初代皇帝とその后と成る人物の可能性も有りますが。
 どちらにしても、地球世界の歴史の悪意あるパロディ化と言うべき事態でしょうが。

 もっとも、これは当てずっぽう。そもそも、清教徒革命当時のドイツにヴィルヘルム一世も、アウグスタ皇后も存在していません。

 俺の当てずっぽうの推測を聞いた瞬間。ソルジーヴィオと名乗った青年の雰囲気は変わらず。相変わらず、意味不明の薄ら笑いを浮かべた顔をこちらに向けるのみ。そして、その傍らに立つキュルケの方も表面上は変わる事はなかった。

 しかし……。

 しかし、表面上は落ち着いた振りをして居ながらも、心の中は表面上ほどには落ち着いていない事が判るキュルケ。彼女の反応から察すると、先ほどの俺の推測はそんなに外れていなかった、と言う事なのでしょう。
 それに、先ほどのタバサの台詞。キュルケがずっと不満げだったと言う内容と、史実上でヴィルヘルム一世とアウグスタ皇后との
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