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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十六話 嫌がらせ
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1日 ハイネセン 統合作戦本部 アレックス・キャゼルヌ
「それで、出兵準備ですか?」
「形だけだがな。統合作戦本部と後方勤務本部では動員計画と補給計画を策定中だ」
「形だけねえ」
ワイドボーンが首を傾げている。気持ちは分かる、俺も首を傾げたい。同盟市民を納得させるために形だけの出兵準備とは……。
「まあ今のところは形だけだがいずれは本当に出兵という事になるかもしれん」
「……」
「ワイドボーン、帝国は本当に反乱を鎮圧出来るのか?」
声を潜めて訊いた。午後三時、ラウンジにはまばらに人がいる。あまり大きな声で話は出来ない。
「作戦について御存知ですか?」
「いや、知らない。お前さんは?」
「俺とヤンはシトレ元帥に教えて貰いました、他言無用という事で。作戦案の評価をさせたかったのでしょう」
「ヴァレンシュタインは? 愚問か、最高評議会は知っているんだからな。知らない筈は無いか」
俺の言葉にワイドボーンは驚いたような表情を浮かべた。どういう事だ、“困ったな”と呟いている。
「何か有るのか?」
俺が問い掛けるとワイドボーンが頷いた。そして“他言無用ですよ”と囁く。俺が頷くと周囲を見回してから口を開いた。
「作戦案を考えたのはヴァレンシュタインです」
まじまじとワイドボーンの顔を見た。嘘を吐いている顔ではない。
「……本当か? 帝国が考えたんじゃないのか?」
「そういう風に言われていますが考えたのは奴です。てっきり知っていると思っていましたよ」
溜息が出た。
先日、同盟議会で何時イゼルローン要塞の反乱が鎮圧されるのかが議題に上がった。政府は帝国が要塞攻略に成功すると説明したが一部の代議員は納得しなかった。
「なんでそれを言わないんだ。作戦を考えたのが奴だと分かれば議会だって大人しくなるだろう」
同盟議会の煩い代議員連中もヴァレンシュタインが作戦を考えたとなれば多少の不満は漏らしても大人しくなった筈だ。奴にはそれだけの実績が有る。
「それはそうです、でも帝国にも面子が有りますからね。ヴァレンシュタインの作戦でイゼルローン要塞を攻略するとなれば反発する人間も居るのでしょう。内密にしてくれと要請が有ったそうです」
「なるほど、帝国側の面子か……」
「協力関係を築く以上、同盟だけの都合では進められないという事です。おそらく事実が公表されるのは反乱鎮圧後でしょうね。面倒な世の中になった物ですよ」
また溜息が出た。俺がコーヒーを飲むとワイドボーンもコーヒーを口に運んだ。口中が苦い……。
「それで、イゼルローンは落とせるのか?」
「落とせると思います。それについては心配はしていません」
「自信が有るようだな。作戦の内容は? 訊いても良いか?」
「それはちょっと……、頭がおかしくなりそ
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