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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十六話 嫌がらせ     
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はい、この要塞をイゼルローンまで運びそしてイゼルローン要塞を出来るだけ損害を少なくして取り戻さなければなりません。どちらも容易な事では有りません」
オフレッサーが“うむ”と頷いた。

「大人しく降伏してくれればよいが……」
「ガイエスブルク要塞がどの程度相手に衝撃を与える事が出来るか、それによると思います」
「……」
オフレッサーの表情が沈んでいる。簡単には降伏しない、そう考えているのだろう。まるで元気の無いブルドックだ。

「向こうに着きましたら要塞主砲を撃ってみたいと思いますが?」
「いきなりか?」
「イゼルローン要塞に当てる事はしません。ただこちらの主砲の威力を見れば多少は怯むのではないかと思うのです。その上で降伏を勧告しては如何でしょう?」
「なるほど、圧力をかけてから降伏を促すか。良い手だな、やってみよう」
オフレッサーがウンウンと頷いている。多少は元気が出たようだ。

「閣下、お疲れでありましょう。味方が集まるまで時間が有ります。少しお休み下さい」
オフレッサーが俺を見て苦笑を浮かべた。
「総参謀長、俺を年寄扱いするな、と言いたいところだが流石に今回は疲れた。相手が人間ならともかくエンジンや出力では手も足も出ん。部屋で休ませて貰う。……卿も少し休め、顔に疲れが有るぞ」
「はっ、お気遣い、有難うございます」

オフレッサーが身体を翻す、そして司令室を出ようとしたが立ち止まって俺を見た。奇妙な笑みを浮かべている。
「不思議なものだな、ミューゼル」
「……と言いますと」
「宇宙艦隊司令長官に就任した時、もう二度と装甲服を着る事は有るまいと思った。地上戦など二度と出来まいと」
「……」
「だがどうやらもう一度装甲服を着る事が出来そうだ、装甲敵弾兵としてな」

「やはり、自ら要塞内に突入されるのでありますか?」
「うむ、この要塞と艦隊は卿に任せた方が良かろう。俺はトマホークを振るった方が良い、適材適所だ」
オフレッサーが笑い声を上げた。

「賛成出来ません、司令長官自ら突入など危険です。御立場を御考え下さい、突入はリューネブルク中将に任せるべきです」
止めても無駄だろうな、そう思った。オフレッサーは上機嫌なのだ。
「そう言うな、総参謀長。反乱の鎮圧と思えば気が重いがイゼルローン要塞を落とすとなれば武人の名誉だろう。この要塞で黙って見ているのは性に合わん。それに俺が前に出た方が相手も怯む筈だ」

「それはそうですが……」
またオフレッサーが笑った。
「後は頼むぞ」
そう言うとオフレッサーは司令室を出て行った。後とは何だろう? 今この場の事か? それとも自分が要塞に突入した後の事だろうか。それとも……。疲れているな、俺も少し休んだ方が良さそうだ。



宇宙歴 796年 12月 
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