第二章
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第二章
そしてそのうえでだ。こう彼女に言ってきた。
「来てくれて有り難う」
「はい」
「それじゃあパスタを食べながら話をしようか」
「パスタなんですね」
「フランス料理よりもこっちの方がいいからね」
課長は笑顔をそのままにしていた。
「だからね」
「フランス料理もですか」
「フランス料理はどうも気取っててね」
今度は苦笑いと共に言った。
「いけないからね」
「気取ってるからですか」
「それにひきかえイタリア料理は」
「美味しくてそのうえ気軽に食べられる」
「その通りだよ。イタリアは最高だよ」
こうまで言う課長だった。
「皆イタリア人になれば世の中はよくなるんだよ」
「イタリアになればですか」
「そうだよ。明るくて屈託がなくて」
イタリアを褒めちぎる課長だった。
「しかもね」
「しかもですか」
「女の子は美人ばかりだし」
「それはイタリアになっても変わらないのでは?」
「いやいや、変わるんだよ」
「どうしてなんですか?それは」
「イタリアになれば変わるんだよ」
かなり無茶苦茶な言葉である。だが課長は本気だった。
「イタリアは最高だからね」
「はあ」
「日本と同じ位素晴しい国だよ」
とりあえず祖国への愛情もあるようである。だがそれでも異様なまでのイタリアへの愛を見せる課長だった。その課長が彼女を店の奥に案内した。
そこにはだ。二人の男がいた。一人は課長と同年代の中年の男だ。力士の如き巨漢でそのまま髷を付ければ実によく似合いそうだ。
そしてもう一人はだ。三十代になったばかりと思われる男だった。
鋭い光を出す黒い目は二重になっていて細めである。その上の眉は一直線で黒い。顔はやや短く鋭利な感じを受ける。顎は短い。黒い髪を上は伸ばしているが左右は短く刈っている。それで大きな耳が目立つ。
その彼がだ。黒系統の色のスーツを着てそこにいたのだ。
そして侑布と課長の姿を見るとだ。すぐに声をかけてきた。
「いや、どうも」
「はじめまして」
二人共立ち上がって挨拶をしてきた。
「稲葉課長、どうもです」
「そちらの方がですね」
「はい、そうです」
課長はこの二人にもにこやかに返した。
「こちらがです。その先日話をしていた」
「若葉さんですね」
「そうなのですね」
「はい、そうです」
その侑布に顔を向けての言葉だ。
「その通りです」
「成程、そうなのですか」
「あらためてはじめまして」
若い方の男が言ってきた。見れば背は高く引き締まった身体つきをしている。その彼が侑布に対してこう名乗ってきたのである。
「浜田雄二です」
「浜田さんですか」
「はい」
こう名乗ったのである。
「宜しく御願いします」
「いや、彼はですね」
巨漢の
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