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コールド=ローズ
第一章
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第一章

                       コールド=ローズ
 若葉侑布はアパレル会社に勤めている。今では主任になっている。
 黒い長い髪にやや垂れている瞳は青がかっている。
 優しげな顔立ちをしており口元には色気が漂っている。背は高く服は露出は高くなくスカートの丈も膝までのものであるのにだ。胸が大きい為色気はかなりのものだ。
 その彼女だが。周りには浮いた話は全くなかった。それを誰もが不思議に思っていた。
「何でだろうな」
「ああ」
「あれがわからないよな」
「全くだよな」
 こう言って首を傾げるのだった。彼女はもうすぐ三十代になろうとしているがそれでもだった。浮いた話一つなく恋人もいないのだ。
 本人は至って穏やかな性格だ。しかも仕事もできる。それでもなのだった。
 そうした相手がいない。全くなのだった。
 そして本人もだ。こう言うのだった。
「実はね」
「実は?」
「どうしたんですか?」
「これといった相手がいないのよ」
 居酒屋で皆で飲んでいる時にだ。こう言ったのである。
「それでなのよ」
「それでなんですか」
「お相手がですか」
「いないんですか」
「いたら違うけれど」
 日本酒のそのグラスを飲みながら話す。
「けれどね。それでもね」
「いないんですか」
「これといった相手が」
「私はね。これといって相手に感じないの」
 そうだというのである。
「どうもね。誰かいたら」
 溜息と共に話す。
「いいのだけれどね」
「そのうち出て来ますよ」
「そうですよ」
 周りはありきたりの言葉で慰めるのだった。
「ですから。あまり悩まずに」
「出会いって本当に運命ですからね」
「それを待って」
「そうなのね」
 こう話してだった。そしてだった。
 その侑布に酒を勧める。励ましの酒をだ。
「どうぞどうぞ」
「飲んで下さいよ」
「もう一杯」
「有り難う。本当にそうなればいいけれどね」
 寂しい笑みで応える侑布だった。とにかく今は相手がいなかった。誰にも何も感じることのない自分にも歯がゆいがだ。それが辛く感じだしていた。
 そんな日を過ごしていた。するとだった。
 ある日だ。上司の課長にだ。こう言われたのである。
「若葉君、いいかな」
「はい?」
 仕事をしている時にである。こう声をかけられた。
「今度の日曜空いてるかな」
「はい、その日はオフですけれど」
「うん、じゃあ丁度いいね」
「いいとは?」
「その日曜だけれど」
 課長は彼女の問いに構わず言葉を続けてきた。
「会って欲しい人がいるんだ」
「会って欲しい人とは?」
「うん、まあここまで言えばわかるかな」
 課長は笑いながら言うのだった。
「それでね」
「そういうことですか」
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