第十二話 好対照
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、一体何をやっているんだ。
(白崎さんにはタイミング合ってたみたいだけど、アタシにはどうかなァ?)
不敵な笑みを浮かべながら、飛鳥は振りかぶり、細身を大きく屈めて、地面から数センチの所で腕を振った。
左のアンダーハンド。物凄い変則投法だ。
カコッ!
紗理奈はその変則投法にタイミングが合わず、フライを打ち上げる。こういう変則投法にも関わらず、飛鳥は制球にも破綻がなく、テンポ良くどんどん投げ込んで紗理奈を詰まらせた。
(ほーら、やっぱり。普通のオーバーハンドの白崎さんと、アタシを一緒にするなよ?)
あっさりと打ち取ってベンチに帰る飛鳥は、ニヤリと笑った。見るからに、中々の強者であった。
ーーーーーーーーーーーーーー
カァーーン!
鋭い音が響く。帝東応援団が大きく湧き上がる。
二巡目の帝東打線は、いきなり紅緒のストレートを捉えた。いくら140超だろうと、ストレートばかりの投球ならば、帝東打線は捉える。
ウェートトレーニングで体はムキムキ。
帝東打線の売りも、圧倒的パワーなのだ。
カァーーン!
「また打ったー!」
とりあえず速い球を投げて、後はスライダーを投げておけば相手が振ってくれる。
それが紅緒のピッチングだが、それに対して二巡目も同じような凡退を繰り返すほど、帝東は甘くない。
「くそー。」
小刻みに点を返された紅緒は、負けん気に火を点ける。打たれたからといって、逃げるという選択肢はない。むしろ打たれたストレートを、ピンチで多投し、気合と根性で帝東打線をなぎ倒しにかかる。紅緒が気持ちを入れて投げ込む渾身のストレートを、さすがの帝東打線も滅多打ちにはできない。チャンスは作るが、勝負どころでバットを押し込まれてしまっていた。
「やるじゃん品田。あの帝東にまだ2点しか取られてないぞ。」
「うるさいわね!それファインプレーの当てつけ!?次は三者凡退にしてやるわよ!」
ピンチを切り抜けても、まだ納得できないとばかりにベンチにふんぞり返って、声をかけてきたセカンドの銀太に怒鳴る紅緒。何というお山の大将。何という熱いピッチング。
それとは全く対照にスイスイと投げ進めていったのは帝東の1年生・神島飛鳥。揺さぶりに弱い南十字学園打線の弱点をしっかりと突き、緩い球を交えて、必要最小限のエネルギーしか使わないようなテンポ良い投球を披露していた。
カッカした紅緒もスローボールでPOPフライに討ち取り、こちらは、実にクールである。
ホットとクール。
好対照な2人の投げ合いで、5-2のスコアで試合は終盤に突入した。
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