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フロリロール
3部分:第三章
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第三章

 彼女が何処にいるかわかった。野原だ。緑に覆われた野原にいるとわかっていた。そこに行けば彼女が笑顔で待っている。アポロンはその笑顔を自分のものとする為に今駆けていた。その手に烏が自分に渡してくれた青い花を持って。ひたすら駆けていたのだった。
 野原に着いた。フロリロールのいる野原にそこには彼女が一人佇んでいる筈だった。
 そう、筈だった。そこには確かに彼女がいた。しかし彼女だけではなかった。そこにはもう一人、若く奇麗な顔立ちの男がいたのであった。
「え・・・・・・」
 アポロンは彼の姿を見て立ち止まってしまった。彼の手には自分が持っているのと同じ青い花があった。どうやら彼も見つけていたようだった。そしてその花を今フロリロールの手に渡していたのだった。
「そんな・・・・・・私は間に合わなかったのか」
「アポロン様・・・・・・」
 そこに烏が来た。そっと主の肩に止まる。
「すいません、私が見つけるのが遅かったばかりね」
「いや、御前のせいじゃない」
 しかし彼はこう言って彼を慰める。
「運命だったんだ、これは」
「運命ですか」
「彼女と私は結ばれない運命だったんだ」
 アポロンは俯いて言った。
「だから。こうなったんだ」
「あの、それでも」
「いいんだ」
 幸せそうに笑い合うフロリロールと恋人が見える。見る度に辛いがそれでも今は見ているしかなかった。それしかできなかった。
「けれど」
「けれど?」
「この花はまだ名前がなかったよね」
「え、ええ」
 烏は主の言葉に戸惑いながら頷く。その小さな動作が如何にも烏らしかった。
「そうですけれど」
「そうか。それじゃあ」
 アポロンは手の中の花を見ていた。それを見ながら今言うのだった。
「この花の名は私が名付けよう」
「名前を」
「そして。世の中に広まるんだ」
 じっと青い花を見ていた。そのうえで言う。彼はまた言った。
「名前は」
「どうするんですか?」
「太陽の花嫁だ」
 彼は青い花をそう名付けた。
「このことをずっと忘れないように」
「そうですか。いい名前ですね」
「私の恋は破れた」
 アポロンはそれは認めた。認めるしかなかった。
「しかしだ。想いは残る、永遠に」
「だからですか」
「花よ、拡がれ」
 その太陽の花嫁を放り投げて言う。花は野原に落ちるとそのまま拡がっていく。そうして瞬く間に全世界に拡がったのであった。
「そうして私の想いを永遠に伝えてくれ。この果たせなかった想いを」
 そう言うだけであった。破れた想いに対して泣きながら。彼は今涙を花に委ねて破れた恋を噛み締めるのだった。
 これがこの青く小さな花チコリーが世界に広まったはじまりである。チコリーにはこうした悲しいはじまりがある。しかしそれを知る者はも
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