昔時の水晶玉
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その目に映るのは――――――床に落ちた、剣。
「クロス殿、敗北……か」
呟く。
そこには、服はボロボロになり全身に傷を負う―――――クロスが、倒れていた。
(ここは……どこだ?)
目を覚ますと、黒が広がった。
痛みに表情を歪めながら身を起こす。
辺りを見回すが、見渡す限りの黒、黒、黒。
黒以外には何もなく、色もなく、広い空間にぽつんとクロスだけがいた。
(俺は…あの女と戦っていたんじゃ……何故、こんな黒い場所に…)
額に手をやる。
立ち上がり、恐る恐る1歩踏み出した。
床が抜ける、とかそんなトラップは無く、問題なく歩ける。
(…何故こんな所に…戻らねば…姉さんを、取り戻さないと……)
フラフラと体を左右に小さく揺らしながら、クロスは額に手を当てたまま1歩1歩進む。
走った訳でもないのに息が乱れ、体中の痛みが徐々に増し、足が重くなる。
見えない何かが体に圧し掛かっているような感覚に襲われながら、それでもクロスは歩みを止めない。
――――――そのつもりだったのに、突如、足が止まる。
(……あ…ダメ、だ…足を、止めたら……)
がく、と膝をつく。
くらり、と体が前に倒れる。
青い目から、ゆっくりと光が消えていく。
(ダメだ…倒れたら、起き上がれなく…なる……姉、さ……)
右手を伸ばす。
でも、そこには何もない。
何かを掴もうとした手が空しく空気を掴み、クロスの体が倒れ――――――
『――――――――――――クロス』
声が、聞こえた。
軽やかで優しいソプラノボイス。
クロスが大好きな人の、柔らかな声。
僅かな期待に顔を上げれば、そこに立つのは自分にそっくりな顔立ち。
自分よりも整った、作られたんじゃないかと思う程の美少女顔。
「―――――――姉さん」
そう呟けば、目の前の少女――――――クロスにとっては大事な姉であるティアは、薄い笑みを湛えこくりと頷く。
それだけで、クロスは安堵し、笑みを取り戻せる。
ふわり、と白く細い手が差し出された。
『大丈夫…クロスなら、きっと。だってアンタは――――――……』
そこから先は、声が無かった。
瞬きをすれば、もうそこにティアの姿はない。
――――――だけど、クロスに力を与えるには十分だった。
姉の無事だけを願い、ずっと自分を責め続けていたクロスには。
「!」
シェヴルは目を見開いた。
小さい声が聞こえた気がして振り返ると、そこには―――――力強く立つ剣士の姿。
ボロボロのバロンコートを纏い、傷
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