昔時の水晶玉
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「飛燕―――――」
叫ぶと同時に、ゆらりとクロスの姿が揺らいだ。
目の悪い人が眼鏡を外して世界を見るような、そんな感じに。
そこにそれがあるのは解っているのに、それが何なのか、何を示しているのか、誰なのかが曖昧になっている。
揺らぐ姿にシェヴルは少し目を見開いた。
「陽炎剣舞!」
揺らいだ姿から、一撃で五閃。
白く淡い光を帯びた斬撃が、シェヴルを襲う。
――――――が、シェヴルの背後に立つクロスは目を見開いていた。
その頬に、一筋の汗が伝う。
(手応えが……ない!?)
剣が当たってはいる。
が、それは人間にではなく、硬い何か。
先ほどの水晶玉では防げないであろう攻撃。
それが防がれた事に驚きながらもクロスは振り返り―――――気づく。
「氷……!?」
シェヴルは、氷の盾に守られていた。
ヒビの入った氷の盾は音を立てて砕け散る。
その盾を生み出せる魔導士をクロスは知っていたし、その魔法だって何度も見たものだ。
「それは、フルバスターの…貴様、造形魔導士か?」
最強チームの1人、グレイの扱う氷の造形魔法。
それと同じものを扱う魔導士なのかとクロスは問う。
が、シェヴルはそれに対して首を横に振った。
動きに合わせ、所々で長さの違う白銀の髪が揺れる。
「違う。私は“過去を具現化した”。この魔法の使い手はパラゴーネの“三又矛”を防ぐべく、この盾を生み出した」
「何を…言っているんだ?」
“過去を具現化”。
今、聞き間違いでなければ目の前の少女はこう言った。
その意味が解らず、クロスは再び問う。
「私は1年以内の過去を水晶玉に映し、その場に過去を具現化する」
右手に乗る淡い水色の水晶が、キラリと光った。
空色の瞳が、海色の瞳を真っ直ぐに見据える。
「それが私の“昔時魔法”―――――過去を生み出し未来を呼ぶ、時を超え結ぶ魔法」
「はわあ〜!」
悲鳴が響いた。
灰色の風がその後ろ姿ギリギリを通過する。
逃げているのは三つ編みの少女―――――“双魚宮”ポワソンだった。
「灰竜の螺旋燼!」
「ひぁっ!?」
そんな彼女と相対するのは灰の滅竜魔導士、ココロ・アーティリア。
両手に螺旋状に回転する灰色の風を纏い、両手を合わせ竜巻のようにして放つ。
「あ、危ないじゃないですかぁっ!怪我したらどうするんですかー!」
「戦ってるんだから怪我するのは当然ですよね!?」
ぷくぅ、と頬を膨らませて怒るポワソンにツッコむココロ。
容姿だけなら同い年に見える2人だが、実際にはポワソンの方が年上である。
はぁ、と溜息をつくと、ココロは大きく頬を膨らませた。
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