第五章 友と明日のソラ編
最終話 別れのソラ
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うなことをしたつもりはない。
全ては、まるで運命だったかのようなめぐり合わせだ。
俺が両親に捨てられていなければ、孤児院で朝我零や皇海涼香と出会うことはなかった。
孤児院にいる俺が、護河奈々に出会わなければ、この町にくるきっかけを失っていた。
そして俺は様々な理由を経て、この町に来て、ルチアに出会った。
ルチアに友人を与えるきっかけを、作ったのが俺であったとすれば、それは俺の運命にルチアが巻き込まれただけのことだ。
「‥‥‥翔?」
「え‥‥‥あ、いや、ごめん。 ぼーっとしてた」
「そう? ‥‥‥そっちの荷物、こっちにお願い」
「分かった。 よっと!」
俺はダンボールを持ち上げ、ルチアの指定した場所に持っていく。
ルチアは予想以上に行動が速く、俺が二つ目のダンボールを運んでいる頃にはすでに四つ目に取り掛かっていた。
ルチアの部屋は元から絵に書いたように綺麗に整理されているから、多分、整理整頓・片付けの類が得意分野なのだろう。
「翔。 そこにあるゴミ、悪いけれど捨てに行ってもらってもいい?」
「了解。 それじゃルチアはそっちの荷物を玄関前に運んでおいてくれ」
「分かったわ」
それから一時間半程で、荷造りはあっという間に終わった。
配送車が来て、一通りの荷物を運んで行ってもらったあと、俺はルチアはお互いにアタッシュケースを持って、家を出た。
名残惜しさは、やっぱりルチアにはあっただろう。
その証拠に、家の鍵を締める瞬間、僅かに手の動きが止まっていた。
恐らくその間に、色々な想い出が走馬灯のように溢れ出たのだろう。
だけどそれは、ルチアの決断だったから、俺は何も言わなかった。
言わない代わりに、そっと抱きしめてあげると、彼女もそっと抱きしめ返してきた。
泣くことはなかったけれど、きっと心のどこかで泣いていただろう。
相変わらず、弱い部分を見せないな‥‥‥。
***
<PM17:00>
俺、ルチア、奈々の三人は灯火町にある唯一の駅『灯火駅』に向かって歩いていた。
あと一時間で電車が来るから、それに乗って俺たちはこの町を出ることになっている。
現在地から駅までは大体十分。
まだ余裕があるからと言う理由で、俺たちはのんびりと、灯火町を歩き回っていた。
「お兄ちゃん。 やっぱり、帰りたくない?」
「え?」
「すごく、寂しそうだよ?」
「‥‥‥寂しくないって言ったら、嘘になる。 この町は、俺の持っていない様々なものをくれた。 そりゃ辛いこともあったけど、全部が価値あるものだった。 この町に来て、本当に良か
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