第五章 友と明日のソラ編
最終話 別れのソラ
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っ。 そ、そんなことするわけないだろうがぁ‥‥‥馬鹿がっ」
頭の中がぐっちゃぐちゃに混乱しながら、俺は一人ぶつぶつと罵倒していた。
玄関を出ると、ルチアが心配そうな表情で『どうしたの!?』と聞いてきたが、俺は別に何でもないと答え、足早にルチアの家へ向かった。
その時の俺の顔は、ルチアから聞いたところでは、林檎や苺並みに真っ赤だったらしい。
ほんと、恐るべし、我が義妹――――――。
***
<PM15:20>
ルチアの家の中で、俺は自分のアタッシュケースを玄関前に置いてから洋室の部屋に入った。
ルチアの家にきたことは何度もあるため、大体の物の位置は把握していた。
荷造りの作業は思いのほか順調に、効率よく進んでいた。
ダンボールに入れるもの、不必要なもの、アタッシュケースに入れるもので分けるのだが、ルチアは迷うことなくテキパキと整理していた。
まぁ、必要最低限のものくらいしかないのがルチアの部屋の特徴でもあるから、荷物整理に時間はかからないのだけど。
それでも、彼女が破棄しようとしているものの中に、本当はとっておきたいものはないのだろうかと気になってしまう。
「翔、作業しながらでいいから、聞いてくれる?」
「ああ。 なんだ?」
ダンボールの蓋をガムテープで締めながらルチアは話しだした。
「私、翔とこの町を出ること、本当に迷わなかったわ。 それは当然、翔の傍にいたいから。 そうなんだけど、もう一つ理由があるのよ」
「もう一つ?」
「ええ。 本当は私、この町に対して想い出がなかったのよ」
「え?」
ガムテープを手で破り取る音が部屋を反響する。
そして両手で底に手を添えて持ち上げ、玄関前に運びながら続ける。
「私の想い出は、このダンボール一つ分しかないの。 十七年この町にいて、たったこれだけの思い出なのよ。 その上、翔がこの町に来る前までは、このダンボールの半分も無かった」
「‥‥‥そうか。 ルチアは、人とあまり接しなかったから」
「その通りよ。 あなたがこの町に来る前の私は、誰とも接しなかった。 本当は接したくてしょうがなかったのだけれど、いつの間にか孤高の人扱いされて、近寄るに近寄れなくなってたのよ」
「なるほど‥‥‥」
「だけど、翔がこの町に来て、私と出会ってからは全てが変わった。 あなたと言う友人が、新たな友人を作って、私もその輪の中に入れた。 そして、たった半年で私もあなたも、沢山の人と交流を深めた。 それも全て、翔のおかげよ」
「いや‥‥‥そんなこと」
そう言われると、正直、照れてしまう。
俺は、そこまで感謝されるよ
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