第五章 友と明日のソラ編
最終話 別れのソラ
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らないわ。 けれど、調べたらそういうことらしいわ」
空のことを、九つの世界(ノートゥング)の住人は『ソラ』と読むそうだ。
そしてソラは、九つの世界(ノートゥング)を行き来するための道となっているらしい。
そこを通ってやってきたのが、精霊だった。
これが精霊がこの世界に来た始まりだということ。
「そして精霊は、この世界で生きる生物‥‥‥人間を知るうちに、惹かれていった。 そして魔法使いと契約したのが、精霊系魔法使いの始まりよ。 『恋』が魔法使いと精霊を繋いだ」
「恋‥‥‥か」
俺は無意識に、左手でルチアの右手を握っていた。
ルチアは一瞬だけ、突然の行動に驚いたが、すぐに受け入れて、指と指を絡めてきた。
そしてギュッと握り締め、互いの体温を感じる。
恋‥‥‥それはまるで、俺とルチアのことを言っている気がした。
「そして精霊は、その一生を主である魔法使いと共に過ごした。 これが精霊系魔法使いの一生」
「一生を‥‥‥か」
「そう。 精霊系魔法使いとして始まり、精霊系魔法使いとして最期を迎えるのよ」
一生、主の傍にいる。
精霊の愛と言うのは、それだけ大きなものなのだと俺は知った。
別世界の存在の、全ての文化が違い、種族の垣根を超えた愛。
それは、生と死の共有なのだと思うと、何とも言えない気持ちが溢れてくる。
‥‥‥俺はここでようやく、ルチアがなぜこの話題を出したのかを察した。
そしてルチアは俺が察したことに気づいたようで、話題を戻して、俺が奈々の実家に戻る話しになる。
「私は精霊として、翔の傍に一生いるつもりよ。 だから翔がこの町を出ていくというなら、私も一緒に出ていくわ」
「いや、でも‥‥‥この町は、ルチアにとってかけがえのない場所じゃないか! 俺なんかのために、学園を卒業もしないで出て行くなんて‥‥‥」
俺は所詮、たった半年しかいなかった新参者だ。
この町に完全に馴染んだわけでもないし、出て行ったとしてもホームシックのようなことはない。
だけどルチアは違う。
ルチアは、ずっとこの町にいる。
そしてこの半年で、様々な人たちと交流して、関係を築きあげてきた。
そんな場所を出ていくのは、ルチアにとっては苦渋の選択のはずだ。
『卒業してからでも、また会えるじゃないか』。
俺はそう思ったし、そう言いたかった。
だけど、ルチアのその瞳は、俺を逃がそうとはしなかった。
俺と別れるなんて絶対に嫌なのだと、その蒼い瞳が伝えていた。
「翔。 私は精霊として、彼女として、あなたの傍にずっといたい。 卒業まで待つなんてできないわよ」
「ルチア‥‥‥」
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