第五章 友と明日のソラ編
最終話 別れのソラ
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うと、何とも言えない幸福感があった。
少し離れて見るからこそ、再確認出来る。
彼女は本当に綺麗で、愛おしい存在なのだと。
「‥‥‥あっ」
と、不意に彼女はこちらを振り向き、俺を見つけるやいなや、花が咲いたように笑顔になる。
そう思うと、次は少しムスっとした表情になり、俺は苦笑いしながら小走りで彼女の傍に向かった。
「ごめんルチア! 遅くなった!」
「本当よ。 卒業式が終わったらすぐに屋上に来るって約束でしょ?」
「ごめん。 紗智達に捕まっててな」
「はぁ‥‥‥全く、翔は相変わらず誘いを断らないわね」
「面目次第もございません‥‥‥」
ルチアの言うとおり、俺は誘いを簡単には断われないタイプらしい。
自分の性格を的確に指摘されると、何も言い返しができない。
そう思って反省してると、ルチアがくすくすと笑いながらこちらを見つめた。
「まぁ良いわ。 翔の性格は理解してるし‥‥‥翔のそう言うところ、別に嫌いじゃないしね」
「っ‥‥‥そ、そうか」
嫌いじゃない‥‥‥遠まわしに好きだと言われると、俺の心臓はドキッと大きく弾んでしまう。
ルチアもルチアで、言い終えてから意識してしまっているようで、頬がほんのりと赤みを帯びていた。
そして互いに見つめ合うのが気恥ずかしくなってしまい、誤魔化し笑いをしながら視線を逸らす。
「えーっと、その‥‥‥、こ、この後さ」
「な、何かしら?」
「さ、紗智達がさ、この後、打ち上げってことで静香さんを誘ってカラオケに行くんだけど、ルチアも行くか?」
「え、ええ。 良いわね。 行くわよ」
どこかぎこちない会話になってしまったが、なんとか話題を出して空気を戻した。
互いに落ち着いたところで、俺はルチアの右隣で金網に背を預けてソラを見上げる。
「今日は本当に綺麗なソラだな」
「ええ、そうね‥‥‥。 静香さんの言うとおり、卒業式日よりね」
「お花見日よりでもあるだろ?」
「それもそうね‥‥‥」
他愛もない会話だった。
だけど、その一つ一つが、俺とルチアにとってはとても幸福に満ちていた。
肩と肩が触れ合う距離で、俺とルチアはしばらくの間‥‥‥本当に他愛もない会話をしていた。
「‥‥‥ねぇ、翔?」
「なんだ?」
「“あの話し”本当なの?」
「‥‥‥ああ。 本当だ」
唐突に‥‥‥いや、ようやく、本題に入った。
ルチア自身、切り出しづらい内容だっただろう。
無理に切り出させてしまったのは、俺の責任だ。
心の中で反省しつつも、俺は頷いて、本題の話しをする。
「奈々がこの町に来て
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