第五章 友と明日のソラ編
最終話 別れのソラ
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、俺は察しながら聞いた。
「誰かに頼ることなんて出来ませんでした。 自分で出来ることを誰かにやらせることが嫌だったからです。 ですが、一人ですることには限界があって、本当は誰かを頼っていいのだと‥‥‥私は、ある後輩から学びました」
気のせいだろうか?
今、一瞬だけ、彼女がこちらを見つめてきた気がした。
その理由を理解することのできないまま、静香さんの話は続く。
「誰かが傍にいてくれる。 そして力を貸してくれる。 それが、どれほど気が楽になって、心に余裕ができることなのだろうか‥‥‥私はその時になって、初めて知りました。 私はその彼に感謝をしています。 私を変えてくれた、強く生きている彼に、感謝しています。 ‥‥‥だから、皆さんも誰かを頼ってください。 甘えるのではなく、頼ってください。 誰かを頼ること、信頼すること、力を貸すこと。 それらはあなたの世界を広げてくれます。 そして、あなたの未来を変えてくれます。 以上です。 卒業生代表、――――――井上静香」
彼女が語り終わり、一礼して下がると、この学園にいる全生徒が拍手をした。
最後に残した言葉が、全員の胸に届いたとは思わないけれど、きっと残るものにはなっただろう。
「――――――では、第**回灯火学園卒業式を閉会させていただきます」
そして数時間に渡って行われた卒業式は、一瞬にも感じる程、あっという間に閉会した。
卒業生は退場し、残りの在校生もしばらくして解散となり、卒業式は終了した。
***
<PM13:00>
卒業式が終わって俺は、校内に戻り、廊下を歩きだした。
普段、この時間であれば教室で授業を行われているのだが、今日は卒業式だから、誰一人いない静かな廊下だった。
そんな違和感を感じつつ、俺は廊下の突き当たりに来ると、右側に一般生徒がよく使う階段があった。
俺は階段を上り、屋上に向かった。
屋上の出入り口であるドアを開けると、春風が全身に優しく当たる。
そして眼前に広がるのは、桜色に染まる灯火町全域の風景だった。
桜の花びらが風に乗って、まるで粉雪のように舞っていた。
そんな綺麗な景色の一つに、一人の少女が金網に背を預け、ソラを見上げていた。
黒く艶やかな長髪を靡かせ、左手で顔に髪が当たらないように押さえている。
ソラと同じ色をした瞳は、初めて出会ったあの日と全く変わらない、綺麗な瞳だった。
俺はその場で立ち止まり、無言で彼女を眺めていた。
愛おしくて、今すぐに抱きしめたいと言う欲求を抑えつつ、誰も寄せ付けない美しさを持つ彼女に見とれていた。
そんな美しい彼女が、今は俺の恋人だと思
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