第五章 友と明日のソラ編
第一話 築き上げたもの
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
――――――漆黒が包む、夜の世界。
二階建ての一軒家の屋根。
五階建てのマンションの屋上。
次に学園の屋上。
他にも色んな家の屋根や屋上を、道具を使わず、その身体で飛び越えて移動する。
なんでそんな移動をするかというと、地上を走って移動するよりも、建物を飛び越えて移動した方が速いと考えたからだ。
普通の人間ではなく、魔法使いである身体でならば、建物を飛び移りながらの移動は容易だろう。
そして彼は今、物凄く急いでいたのだ。
「どこだ‥‥‥どこだっ」
体力を消費し、息を荒げながら移動する。
魔力を脚力上昇と、視力上昇に使用することで、常人ではありえない移動能力と、天体望遠鏡にも勝るとも劣らない視力を手にすることができる。
高いところに移動し、その視力で探す。
見つからなければ、また別の場所に移動して同じことをする。
‥‥‥それを繰り返して、何十時間が経過しただろうか?
休憩も、睡眠もとっていない今の彼の体力は、限界をとうに超えていた。
それでも、彼は止まれなかった。
頭で考えるよりも、体が勝手に動いてしまう。
だから探し続ける。
自分の本能が赴くがままに、彼女を探し続ける。
それを続けているうちに、気づけば灯火町のほとんどの場所を探していた。
そして彼――――――相良翔は一人、自分が通う灯火学園の屋上にいた。
「はぁ、はぁ、はぁ‥‥‥っ」
始めての休憩をとろうと、その場で仰向けに大の字で倒れると、今までの疲れが大量の押し寄せて、関節のあらゆる場所から激痛が襲い来る。
夜に吹く、冬の冷たい風が全身の熱を奪っていく。
気持ちよさと同時に、疲労から睡魔が襲いかかってくる。
「いかん、いかんっと!」
寝てしまいそうだった翔は、上半身を起こして胡座になる。
両手を屋上の床につけると、ひんやりとした冷たさが伝わって気持ちが良かった。
しばらく翔は、風の音に心落ち着かせていた。
「はぁ〜‥‥‥。 すぅ〜‥‥‥はぁぁ〜」
深呼吸を繰り返すと、冷たい空気が喉を通って肺に達し、内側からも熱を奪っていった。
吐息は純白で、ソラはどこまでも黒かった。
そんな当たり前のことが、今は違和感だった。
特別なものではなく、いつもの光景なはずなのに、どうして今はこんなにも心が落ち着かないのだろうか。
「ルチア‥‥‥」
そして、どうしてこんなにも、彼女のことを想ってしまうのだろうか?
今、彼女は何をしているのだろうか?
冷羅魏と仲良く会話をしているのだろうか?
冷羅魏と心を通わせているのだろうか?
「‥‥‥くっそぉっ!」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ