第五章 友と明日のソラ編
第一話 築き上げたもの
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灯火町に来る前までの彼であって、今の彼は全く違う。
最初は理解できなかっただろう。
最初は違和感だっただろう。
だが、彼はルチア=ダルクと出会い、魔法使いとして覚醒したことで知らなかったことを多く知ることができた。
魔法使いとして様々な事件に関わる中で、人の心を多く知ることができた。
それは、とても種類が多くて、十人十色で、その一つ一つが新鮮に感じた。
どれ一つ、無駄なことなんてなかった。
そして友達、仲間、戦友、兄妹、義兄妹など、様々な人の関係性を知っていき、その大切さを知った。
大切さを知る中で、失った絆も、時にはあった。
互いの意見が食い違い、ぶつかり合うこともあった。
けれど、その度に友達や仲間と呼べる人は助けてくれた。
この灯火町という小さな場所で手に入れた大きな絆を、今こそ使うときなのだと翔は思った。
「分かりました。 皆を、信じたいと思います。 もちろん、静香さんも」
「はい。 それが良いでしょう」
その時、静香が見たのは、迷いの霧が晴れた澄空のような、清々しそうな笑顔だった。
そして、彼はもう大丈夫だと確信した。
どんな苦難があろうと、彼はこの町で築き上げてきた関係を正しく使い、乗り越えて見せるだろう。
「‥‥‥よしっ」
翔は右ポケットの中に手を入れると、中から愛用しているスマートフォンを取り出した。
画面に触れると、待受画面がついた。
翔は右手で持ちながら、その右手の親指で画面に触れ、スライドさせていく。
すると画面は切り替わり、翔は通話機能をタッチする。
そこには、今まで出会ってきた人のアドレスが大量に載っていた。
改めて見ると、ここに載っているのは全員、この町で出会ってきた人なのだと気づく。
灯火町に来る前は、人と接することをしなかったために、アドレス交換なんてやらなかった。
だけど、この町に来て、様々な事件を経験していったことで色んな人の情報を交換し合えた。
だから翔は、皆の名前を見ながら改めて思う。
「この町に来て、この場所に来て、――――――ほんとに良かった」
そして翔は迷いもなく、全員のメールアドレスをタッチする。
全員に、一斉メールを送るのだ。
メール内容はシンプルに、急ぎながらも丁寧に書いた。
『こんな時間に悪い! だけど頼む! 俺に、力を貸してほしいんだ!』
それだけの短い文を入力した翔は迷うことなく送信ボタンをタッチした。
すると今日は電波が良いようで、一斉メールは五秒もかからずに送信完了した。
それを確認した翔はスマートフォンの画面を消すと、再び右ポケットにしまう。
そして静香を見
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