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魔法使いの知らないソラ
第五章 友と明日のソラ編
第一話 築き上げたもの
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その場に落ちていた小石を、右手人差し指と中指の第一関節で挟み、ダーツのように前方に向けて、力いっぱいに放った。

指から離れる瞬間、大気を引きちぎり、放たれた小石は弾丸のように真っ直ぐに飛ぶ。

小石は屋上の出入り口である扉の鍵穴に吸い込まれるように直撃し、貫通して穴を開けた。


(器物破損で、怒られるかな‥‥‥)


微笑混じりにそう思い、心の中で軽く謝罪をした。


「――――――こんなところで、何やってるんですか?」

「え‥‥‥」


不意に、背後から聞き覚えのある女性の声が聞こえた。

反射的に後ろを振り向き、確認するとそこには井上静香がいた。


「見つからなかったんですね」

「‥‥‥はい」


静香は、翔が何をしているのかを聞くまでもなく理解していた。

――――――相良翔が退院して二日、学校を休んでまでしてルチアを探していることを、静香は分かっていた。

彼はいつものように誰にも言わなかったが、それが分からない静香ではなかった。

翔は言い訳や嘘を言わず、素直に答えていた。


「手がかりもなしに闇雲に探しても埒が開きませんよ」

「わかってます。 けど、このまま黙って何もしないなんてできない」

「‥‥‥でしょう、ね」


静香はしんみりとした表情で翔を見つめてそう言うと、彼の顔を見るのが辛くなってソラを見上げた。

翔がルチアのことを想っている‥‥‥その事実を痛感することから逃げたのだ。

逃げながらも静香は、自分の言える言葉で今できることを伝えた。


「翔さん。 たまには、お友達を頼ってみてはいかがですか?」

「‥‥‥人海戦術を使えってことですか?」

「はい。 今のあなたにとって、それが最善の選択だと思います」

「‥‥‥」


その選択を、彼は一度も考えていなかった。

なぜなら彼は、誰かに頼ると言う経験がほとんどなかったからだ。

親がおらず、甘えると言うことを覚えられず、孤児院では共同生活の中で一人で出来ることは一人でなんとかしてきた。

護河家に住むようになっても、家族になりきれず、頼ることができなかった。

それが今までの彼だ。

‥‥‥だが、今の彼は違う。


「あなたはこの灯火町に来て、様々な人と出会っていきました。 それは決して、良いことばかりではなかったでしょう。 けれど、そのおかげであなたは多くの友人を作れました。 今こそ、出会ってきた皆さんを‥‥‥私達を、信じる時なのではないですか?」


優しくも、真っ直ぐな言葉が、翔の心に突き刺さる。

「信じる」‥‥‥たったそれだけの事を、一番に知らなかったのは、紛れもなく彼だった。

だけどそれは、
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