第四章 雨の想い編
第五話 涙のソラ
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
<PM13:30>
灯火病院の病室のベッドの上で、彼、相良翔は意識を取り戻した。
真っ白な天井が、彼の視界を支配した。
「ここは‥‥‥ああ、病室か」
翔は慣れたように、今の状況を理解し、上半身だけを起き上がらせる。
薄い水色の病人服であることと、倒れてからまだ、一日も経過していないことを確認する。
翔はこの病院には何度もお世話になっている。
入退院を繰り返しているため、この光景で起きれば、灯火病院の病室なのだと、すぐに分かるようになっていた。
すると人の気配を感じた翔は咄嗟に左を向く。
左には病室の出入り口があるため、恐らく誰かが来ているのだろうと悟った。
「お兄ちゃん〜!!」
「ぶあっ!?」
左を向いたその瞬間、腹部を鉛がぶつかったかのような衝撃が襲い、肺に溜まった酸素が全て一気に放出され、海老反りになる。
何事かと理解するよりも先に衝撃が襲いかかり、驚きのあまり、目を白黒させてしまう。
「お兄ちゃん‥‥‥元気そうでよかった!」
聞き覚えのある声だった。
自分のことをお兄ちゃんと呼ぶのは、この世に二人いる。
義妹の護河奈々‥‥‥いや、彼女にしては声が幼すぎる。
つまり声の本人は、もう一人の少女。
「ミウちゃん‥‥‥か」
「うん!」
翔は激痛を耐えながら、なんとか声を振り絞ってそう言った。
彼女は、一ヶ月前までこの病院に入院し、相良翔とは、過去に魔法関係で知り合った――――――小鳥遊猫羽という少女である。
みんなは愛称で『ミウちゃん』ちゃんと呼び、今は翔達とは別の学園で学園生活を送っている。
翔が彼女と会うのは久しぶりで、少し髪が伸びていたり、顔の丸みがなくなってきたりと、大人びていることに驚いていた。
とはいえ、声質はまだ変わらないようだ。
「ミウちゃんは、どうしてこの病院に?」
「それはね、ショコラが朝、私にお兄ちゃんが病院に運ばれたって聞いたから、心配できたの」
そう言うと病室の窓の外から黒猫が入ってくると、翔の頭の上に飛び乗る。
頭にかかる重みは、首に負担がかかり、首の付け根に僅かな痛みが出る。
「おお、ショコラ。 久しぶり」
《やっほ〜! 今日で入院何回目だっけ〜?》
「ま、まだ二回じゃないか?」
「二回×十回だよ、お兄ちゃん」
「ぅ‥‥‥」
二名のダブル攻撃に適わなかった翔は、負けを認めて俯いてしまう。
ミウともう一つの声、それはこの黒猫の声だった。
ミウの愛猫にして、パートナーの猫――――――『ショコラ』である。
この猫も翔と知り合いで、魔法使い関係の事件に関係している
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ