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魔法使いの知らないソラ
第四章 雨の想い編
第五話 涙のソラ
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いる証である心臓の鼓動。


「お兄ちゃん‥‥‥もう、いいんだよ?」

「え‥‥‥」


耳元で囁く、少女の言葉。

翔の耳を通り、そのまま心にたどり着く。

そしてミウは翔を縛る鎖を断ち切るように、その想いを伝える。


「無理、しないでいいんだよ? お兄ちゃんは、誰よりも傷ついた。 誰よりも苦しんで、誰よりも悩んだ。 お兄ちゃんはもう、十分だよ。 だから、今くらいは‥‥‥素直になっても、良いんだよ?」

「ミウ‥‥‥ちゃん」


徐々に、心に限界がきていた。

何気ない言葉なのに、こんなに心が解放されそうになる。

今、翔は泣きたい気持ちでいっぱいだった


「大丈夫。 お兄ちゃんが守りたい、義妹さんも、ルチアお姉さんも、皆いないから」

「‥‥‥ごめん、あり、がとぉっ――――――」


翔はミウを力いっぱいに抱き寄せると、彼女の胸の中で泣いた。

苦しみも、悲しみも、後悔も、悔しさも、全部が行き場なく胸の中に溜まっていた。

そんな行き場のない想いを、翔はその小さな胸の中で、声にあげて吐き出した。

そして、そんな彼に救われた少女は、その悲痛な叫びを、受け止めてあげた。


「くっそぉ‥‥‥ちくしょぉ‥‥‥くそったれぇ‥‥‥!!」


この痛みは、一生消えないだろう。

この悔しさは、一生消えないだろう。

それでも、あの時守れなかった彼女は、この雨降るソラのどこかで、翔のことを笑顔で見つめていた気がした――――――。
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