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魔法使いの知らないソラ
第四章 雨の想い編
第五話 涙のソラ
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ものだった。

本人も、自分が弱いって自覚はあった。

だが、守りたいと言う強い正義感は、何にも勝る強さだった。

翔はそんな彼女の力になりたいと思い、彼女と戦ったりしての訓練をした。

一度、『死ぬのは怖くないのか?』と、聞いたときに彼女は笑顔で答えた。

『死ぬのは怖くない。 だが、あたしが何もせずに誰かが死ぬのは嫌なんだ。 それに、あたしには魔法しかない。 この力がなくなれば、あたしには何も残らないからな』

そんなことを言っていた。

そんな彼女は、青春を謳歌しているスポーツ選手の如く、ダイヤモンドのように輝いて見えた。

彼女への憧れ、彼女を尊敬してやまなかった。

だが、二人はある事件に関わってしまった。


「事件は、彼女と出会って三日後、この町で魔法使いの犯罪組織があったんだ 組織は五人組って小規模なものだけど、その実力は確かなものだった。 その組織を壊滅させようって、彼女は勝手に突っ込んでったんだ」


彼女の正義感を、もっと理解できればよかった。

そうすれば、彼女の『死』を、阻止出来たかもしれない。


「彼女は一人で敵陣に突撃したんだ。 俺は慌てて助太刀に入った。 戦いは拮抗したよ。 敵も突然の襲撃に驚いていたからな」


次第に均衡は崩れ、こちらと敵の人数は同じになった。

あと少しで、こちらの勝ちになると思った。


「だけど、彼女も体力がほとんど残らなくてな、本当は俺一人と敵二人だったんだ。 そうなると、俺も辛かった。 前に三人相手にしていたし、体力も魔力もほとんどなかった」


そして、翔に限界がきた。

ほんの僅かなミスで、敵の一撃が翔に襲いかかった。

避けきれない‥‥‥翔はそう思った。

けれど、そんな時――――――。


「‥‥‥彼女は、俺を庇って、その一撃を受けたんだ」


パイプ椅子の上で、ミウはビクッと震える。


「そこからは、もう一心不乱だった。 我に戻った時には、敵全員、血まみれで倒れていて、俺の全身は誰かも分からない血がぐっしょり濡れていた」


後輩に話すべきような内容ではなかっただろう。

一生、黙っているつもりでいた。

だが、全てを話したとき、あの時の痛み、悲しみ、苦しみが鮮明に蘇ってきた。

翔はそんな表情をミウに見せまいと、すぐに笑顔になってミウに言った。


「俺が戦う理由は、彼女みたいに、誰かに守られないためだ。 ミウも、ショコラも含めて、みんなを守りたいんだ」

「‥‥‥」


するとミウは無言で立ち上がると、翔から見て左から、両腕を首に巻くと、自分の胸に寄せた。

翔の頭はミウの、その小さな胸に包まれる。

感じる、人の温もりと、生きて
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