第四章 雨の想い編
第四話 恐怖と決意
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《AM11:00》
灯火町の西側にある5階建ての病院『灯火病院』。
その五階東側の個室の病室に、三人の少女達がいた。
最新式のベッドで意識もなく、全身を白い包帯が巻かれてその姿はミイラ男にも近しかった。
半透明な酸素マスク、心電図モニターから聞こえる音、点滴が落ちる音。
その一つ一つを見ると、彼――――――相良翔の容態が芳しくないことが明らかだった。
そんな彼の姿を、斑鳩 瞳、井上 静香、護河 奈々の三名はパイプ椅子に座って見つめていた。
事は昨日の夜、冷羅魏の所在が明らかとなったため、斑鳩達は翔とルチアのもとに急いで向かった。
辿りついたとき、翔は重傷で意識を失っていた。
全身は血だらけで服もボロボロだった。
さらに驚いたのは、ルチアが冷羅魏側のものになってしまったこと。
それが、翔が負けた理由なのだと彼女らはすぐに察した。
幸い、命に別状はないと医者は言っていた。
それは斑鳩が翔に治癒魔法をかけていたため、致命傷となりうる箇所は治っていたのだ。
とはいえ、そのほかの傷が残るため、包帯などで巻かれているのが現状だ。
そして問題は、魔法でも治せない場所――――――心だった。
医者からの説明だと、相良翔は精神的に大きな傷を負って、そのショックもあって意識不明に陥っているらしい。
目覚めるのは明日になるかもしれない、明後日、来週、来月、来年‥‥‥もしくは――――――永遠に目覚めないかもしれない。
そう告げられた時、彼の義妹である護河奈々と、彼の先輩である井上静香の二人は恐怖に震えた。
今まで、魔法使いとして生き、魔法使いとして死ぬことを恐れたことはなかった二人にとって、目の前の現実はその覚悟を乱し、絶望させた。
死ぬなんて怖くない、そんなのは本当の現実を知らない人の高慢でしかなかったのだと、二人は思い知らされた。
自分もいつか、彼のようになってしまうのだろうか?
自分もいつか、彼のように周囲をこんなにも不安にさせてしまうのだろうか?
自分もいつか、彼のように苦しんで傷ついていかなければならないのだろうか?
真の魔法使いとは、そう言うものなのだろうか?
目の前の現実は疑問を生み出し、生み出された疑問は不安を呼んだ。
20歳にも満たない少女たちは、意識を取り戻さない彼を前に、ただ不安でいることしかできなかった。
「‥‥‥瞳さん」
「なに?」
辛い表情の中、井上静香は斑鳩に問いかけた。
「瞳さんは、こんな光景を何度も見たことがあるんですか?」
「‥‥‥もちろん、何回も見たことがある。 そしてその度に、その命は失われていった」
「ッ!?」
斑鳩は、嘘一つつかな
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