第四章 雨の想い編
第四話 恐怖と決意
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ら彼は傷つく羽目になった。
もし自分が強ければ、彼を守って家を出ていくことがなかっただろう。
まして魔法使いになって、この病院で入退院を繰り返すこともなかった。
「でも、今の私はもうあの頃の私じゃない。 もう、お兄ちゃんの背中を見ている私じゃない。 お兄ちゃんと肩を並べて、一緒に乗り越えたい。 痛みも全部、分かち合いたい」
二人の決意を聞いた斑鳩は、優しく微笑んだ。
緊張感のある空間はゆっくりと温もりを取り戻し、穏やかな空間へとなった。
「合格。 あなた達もまた、立派な魔法使いになるわね」
それが先輩としての、斑鳩の言葉だった。
三人が笑みを取り戻すと、心なしか彼の――――――相良翔の表情も、笑みを見せた気がした。
***
しばらくして三人は病院にある食堂に向かい、昼食を摂った。
そして昼食を済ませ、マグカップに入った紅茶を啜りながら、斑鳩は周囲に聞こえない音量で二人に話しだした。
「さて、それじゃ二人に話さないとね。 私と彼、冷羅魏氷華の関係を」
「お知り合いだったのですか?」
「知り合いっていうか、彼は、私が魔法使いとして戦った、最後の敵」
斑鳩瞳と冷羅魏氷華の意外な関係性に、二人は口にすすっていた紅茶を吹き出しそうだった。
斑鳩は懐かしむようにさらっと言ったが、かなり重要なことだった。
「なんで、今まで黙ってたんですか?」
「ごめんなさい。 本当はもっと早くに言うべきだった。 だけど“彼”から口止めされていたの」
「彼?」
「そう。 ――――――相良翔、彼に黙っててくれと言われた」
彼の名前が出たとき、二人は即座に納得して、さらに苛立って軽く舌打ちをする。
激昂状態になり、低い声で静香はぼやく。
「全くあの人は、また一人で抱え込んでいたんですね」
「もぉ、お兄ちゃんったら!」
「ふふっ」
二人のいじけ方に、斑鳩はつい頬を緩めて笑ってしまう。
奈々はともかくとして、静香がこんなにも感情を表に出すなんて思わなかったため、驚きのあまりに笑ってしまった。
だが、二人の言い分はごもっともだった。
彼の自己犠牲は留まることを知らず、気づけば他人の過去にも首を突っ込んでいた。
彼が目覚めたら、取り敢えず説教だなと心に決めた二人は話しを戻し、斑鳩の話しを聞いた。
「私が魔法使いとして戦っていたのは二年前まで。 その二年前に、私は彼と出会って、戦った」
ここからは細かい部分を省いて話す。
――――――これは、二年前の冬の回想。
当時の斑鳩は周囲にいた魔法使いの中で最も強い存在で、
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