第四章 雨の想い編
第四話 恐怖と決意
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―――(大丈夫。 俺が、守ってみせるから!)
その時、二人には彼の言葉が聞こえた。
意識は変わらず、戻らないまま。
それでも二人には確かに、彼の声が聞こえた。
優しく、頼もく、力強い言葉と声は間違いなく相良翔のものだ。
幻聴と言えばそうなのかもしれない。
だけどその言葉は、例え幻聴であったとしても、二人の迷いを解消させる鍵となった。
(私が恐れば、翔さんは私を守るために傷つく‥‥‥私が恐れて、弱ければ、彼が傷つくことになる)
(お兄ちゃんはいつも私を守ってくれた。 私のために、いっぱい傷ついた。 私が強かったら、お兄ちゃんが傷つくことも、灯火町に来て魔法使いになることもなかった)
自分の命を顧みない彼に、二人はいつも守られてきた。
だけど、仮に自分達が強ければどうなっていただろうか?
彼は傷つくことがなかった、魔法使いになんてなることはなかったのではないだろうか?
だとしたら自分達に責任があって、それを一つずつ償っていかないとならないのではないかと、二人は思った。
彼はきっと、二人をせめたりはしないだろう。
けれどこれは守られてきた者としてのせめてものの恩返しなのだ。
命を賭けて、色んな無茶をして救ってくれた彼への感謝。
例え大義名分を振りかざしているのだろうと、蔑まれても構わない。
なぜなら自分達は、彼ほど綺麗な人間ではないから。
そして決意を固めた静香は微かに微笑みながら、斑鳩をじっと見つめて言った。
「私は何度も彼に守られ、救われてきました」
静香は魔法使いとして、一人で戦うことが多かったが、最近では相良翔と共に事件に立ち向かっているということを斑鳩は思い出していた。
「彼がいなければ、今の私はここにはいなかったでしょう。 それと同じように、私と出会わなければ彼もここで倒れることはなかったでしょう。 私は彼に生きて欲しい。 私を変えてくれた彼を、私を守ってくれた彼を、私を救ってくれた彼を‥‥‥今度は私が、守りたい」
静香に続いて、奈々は義兄である相良翔の顔を見つめながら言った。
「お兄ちゃんはいつも、私とは距離をとってて、兄妹っていうよりも友人みたいなものだった。 だけどお兄ちゃんは、私を守ってくれた。 立場がなんであっても、どんな関係でも気にしないで、いつも守ってくれた。 でも私は、お兄ちゃんには何もできなかった。 そのせいで傷ついて、苦しんできた」
彼の傷ついた姿を見るのは、これで何度目だろうかと今まで奈々は考えていた。
だけど、それは違う。
彼が傷ついたじゃない‥‥‥『彼を傷つけた』だ。
彼を傷つけたのは、これで何度目だろうか。
自分が弱かったか
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