第四章 雨の想い編
第三話 無情の真実・無情の別れ
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精霊はこの現代で、なんと人の姿となって、精霊としてではなく人として生きているのだ。
そして精霊から人になるとき、精霊であるとバレないために精霊であると言う記憶を消去させ、人間としての情報を脳に与えた。
そのことで、精霊は人となり、人に紛れて生きることができたのだ。
彼女、ルチア=ダルクもまたその一人だった‥‥‥そういうわけだ。
ルチアが何も覚えていないのは、そもそも経験していないからだったのだ。
「精霊も面白いことをするよね。 木の葉を隠すなら森の中とはよく言ったものだよ。 人から隠れるために人になるなんてね」
「私は‥‥‥精霊‥‥‥」
彼の言葉はルチアの耳には入らなかった。
今はただ、その事実と現実だけが支配していた。
自分は今まで、皆を騙してきた‥‥‥皆を欺いてきたのだと思ったら、怖くなっていた。
皆のためにと思ってしてきた今までの戦い‥‥‥それも全て、偽りを隠すための大義名分だったと思うと気が狂いそうになる。
自分は、そんなに最低な存在だったのだと。
「あぁそうそう。 君はさっき、相良翔のことが好きだって言ってたね」
「ッ!?」
触れてはいけない話題だった。
今、必死に考えないようにしていた存在。
無理やり忘れようとしていた存在のことを、存在の名前を‥‥‥彼は何の躊躇もなく出した。
「彼はどう思うかな〜。 人を騙すだけ騙すような精霊、そんな人に好きだって言われるのは嫌だろうね。 むしろ今までの優しさも全部全部ウソだったんじゃないかって疑われちゃうよね〜」
「や‥‥‥そんなの‥‥‥いや‥‥‥」
ルチアは絶望と恐怖に襲われ、声が震え、掠れる。
全身は大きく震え、膝は力なく崩れる。
その場に力なく座り、左手にあった鎌は消滅していた。
頬を大量の涙が伝い流れ、顔はひどくグシャグシャになっていた。
瞳は光を失い、遠くを見つめているようだった。
その姿に冷羅魏氷華は口の両端を釣り上げて笑い、座り尽くすルチアの瞳を覗き込みながら言った。
「君は彼らの邪魔者でしかないんじゃないのか? そう‥‥‥俺たちといるべき、こちら側の化物でしかないんじゃないのか!」
「っ――――――」
それは、彼女の心を粉々に砕くには十分過ぎる言葉だった。
信じたくない真実、彼女は全てに絶望した。
消えていく‥‥‥友達と呼べる存在と作っていった思い出。
笑い合い、喜び合い、時には怒りあったりした。
けれどその一つ一つは、彼女にとって大切な思い出だったはずだ。
だが、その全てが崩れ去っていく。
文字通り、砂上の楼閣のように‥‥‥砂で作り上げたものが、たった一度の
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